望まれない英雄肆【戦国BASARA】 (ページ4)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:2,489 hit

３橋の架からない二人ページ4

馬術の特訓後、部屋に戻った私は秀満さんが言った事を反芻していた。

私の存在が、常真が将として成長するのを邪魔する。
それはなんとなく分かる気がする。

こう言っちゃなんだけど、常真は私に気を遣いすぎだと思う。
やっぱり私の過去の事を気にしてるんだろうけど、常真が気にやむことないっていうのは、とっくに分かってる。

それなのに私の事を気にかけてくれて、私もつい頼っちゃって、これじゃ大将も何もない。

…最近も、変な感じになっちゃってるし。

ただそれよりも、秀満さんのその後の言葉。

少なくとも秀満さんは、私達の仲を悪くは思ってはいないみたいだけど。

私と常真の、『溝』ってなんだろう。

「エリ、今いいか？」

障子の向こうから常真の声が聞こえた。

「あ、ちょっと待っ…『ちょっと待って』って言おうとしたのに！」

軽く部屋を片付けてから、と思ったのに、常真が無遠慮に障子を開けてしまった。
前言撤回。常真、私に全然気遣ってない。

「別に見られて困る物も…なんだこれは？」

「見られて困る物だよ！！」

常真が手に取った日記を急いで奪還した。

フシャーッと威嚇するも、常真は気にした様子もないようだった。全くもう。

「毛利が徳川と同盟を結んだ」

毛利。どこかで聞いたような。

ああそうだ、薩摩から大坂に戻る時に、安芸って所で聞いたんだ。
そこが毛利って人がいる場所だったと思う。

「挨拶に行くの？」

「一応な。それに、毛利が何か企んでいたら、巻き込まれないように動かなきゃならん」

準備をしておけよ、と言って部屋を出ようとする常真。

「あ、待って常真」

振り返った常真に、聞きたかった事を…

──常真は、なんであの舟で泣いたの？

「…常真。私達の間の、溝ってなんだろ？」

一瞬頭に浮かんでしまった事を急いで飲み込み、別の質問を口にする。
こっちも割とハードな質問だけど。

「溝？ …秀満に何か言われたのか？」

「よ、よく分かったね」

なんとなくな、と答えた常真は少し目を伏せて考えた様だったけど、

「さあ、分からん」

と言ってさっさと言ってしまった。
やっぱり常真にも分かんないか。

さてと、私も出かける準備しなくちゃ。

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～
～常真side～

溝、か。

秀満が『壁』ではなく『溝』と言ったのは、意図しての事なのだろう。

俺達の間の、溝。

俺達の間に壁はない。

だが俺達の間には、深い、深い溝がある。

そして、俺とエリの間に橋(きずな)など、最初から架かるはずもないのだ。