エピソード１８7 ページ49
そこまで考えて。
あの頃の私を救ってくれたのは何だったのかを思い出した。
一番は、炎兄のくれた優しさだった。
でも、他にも。
私の心から、一時でも悲しみを忘れる機会をくれた存在を思い出した。
それは。
他でもない。
(――紅覇お兄ちゃんだ)
そう。
あの兄の悪ふざけは、私の頭痛の種だった。
だけど。
あの兄に対して怒って、喚いて……その時。
私の心は悲しみを忘れていたのだ。
最近だって、北東郡のことで不安な心を紛らわすよう、紅覇お兄ちゃんは私にちょっかいをかけてくれていたじゃないか。
(それは、妹思いの義兄として？ それとも……)
――ガチャリ。
ぐるぐる考えていたら。
ノックをする前だったのに、部屋の扉が開いた。
そこに居たのは意外な人物。
「え……どうして、貴殿がここに？」
？？？「あらぁ、どうしてだなんて。そんなの決まってますわ」
そこに居たのは、この郡で一番偉い人。――蝶凌さんだった。
後ろにはお伴なのだろう。息子の孝里殿が軽く袖を合わせて礼をする姿も見えた。
蝶「この北東の民を守るため、尽力してくださり負傷した皇子様……、を郡の代表者として見舞うのは、自然なことだと思いませんこと？」
いつものように腕を組んで、右手は頬に添えて。くねっと腰を捻って言われた。
「確かにそうですが、こんなに早く……」
――兄が怪我をしたのは今日の昼すぎ。
時間としては半日も経っていない。
蝶「北東郡の長として、この郡で起こることはつぶさに把握するの。それも、私の仕事の内よぉ？」
ため息交じりに言われた。……そんな想像力もないのか、そんな私への呆れを感じ取った。
「……。そうですわね。この度は北東郡の民、兵士の方々を危険にさらした非を詫びます」
遅いかもしれないけれど。その謝罪はしなくちゃいけないと思ってはいたから。
だって。私は――。
「今回の雪の移動について、責任を負う者として心からお詫びいたします」
そういって、深く、深く頭を垂れた。
蝶「うふふ。いいのよぉ？ 結果としては……あなたのお兄様とあなた自身の機転で、こちらに怪我人はいないのですから」
「そう仰っていただき、感謝します」
蝶「あなたのお兄様も、ちゃんと考えてくださったようでよかったわぁ」
妙に明るい声で言われて、思わず「はい？」と顔を上げた。
蝶「以前お会いしたあなたのお兄様は、力を振りかざすのみ。……少なくとも、私にはそう映っておりましたわ」
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません（汗） 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです！ (2014年10月5日 13時) (
レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね！！楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください！応援しています！！ (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます！ なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが（汗） 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します！(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい！とっても楽しみにしています！ (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます！ 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません（滝汗） オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので！ 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします！ (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：一花 | 作成日時：2014年7月25日 20時
