検索窓
今日:25 hit、昨日:1 hit、合計:48,161 hit

エピソード186 ページ48

*
――結局。
紅覇お兄ちゃんの迅速な避難誘導のおかげで、怪我人は奇跡的にゼロだった。
……当の、紅覇お兄ちゃん一人を除いて。

今回の逆転送は、西夏郡の魔法式の一部が誤っていたためだと、仁々と忠雲から改めて謝罪の連絡が入ったのは夕方。
太陽が山影にほぼ隠れたころだった。
転送魔法の予行演習は明日やりなおすことに決め、その日の仕事を終えた。

そして……夜。
私は兄の寝室に向かった。
既に治療は終わって休んでいるという、その部屋に。


*

「すー、はー」

木製の扉の前で、いったん大きく深呼吸した。
仕事が終わって、関所の宿泊施設に戻って。
ここに……お兄ちゃんの部屋の前にくるまで、どんな顔で兄に会うべきか考えていた。

(……紅覇お兄ちゃんは、私を庇ってくれた)

そのために怪我をしてしまった。
それだけでも、申し訳なくて……どんな顔をして兄に会うべきか悩む。

そして。



――『大事な女の子を守るのに理由って必要?』



兄が意識を失う前にくれた言葉が、私を更に戸惑わせていた。
お兄ちゃんがくれた言葉。……その意味を考えた。

ずっと私をからかってきた紅覇お兄ちゃんだった。
口づけは流石にやり過ぎだと思う気がしないでもない。
でも。
動転した私の心をおさめるには、あの方法は効果覿面だった。

だから。

よくよく考えた。
普段ふざけていて、いろんな方法で私をからかってきた兄。
でも、『男(おとこ)』や『女(おんな)』の話はなかった。
いや。全然なかったわけじゃない。
けれども、そういう話が出てきたのは、炎兄のことに関してだけだと思う。……たぶん。

(私のみえみえの炎兄への好意について、紅覇お兄ちゃんが突っ込むことはあった)

だけど。
紅覇お兄ちゃん自身が、私へ兄と妹以外の感情を抱いているなんて話は聞いていない。
……少なくとも直接は。

そこで、西夏郡のことを調べていたころ、玉姉がくれた言葉を思い出した。


――『他のお兄様方も、Aちゃんと同じかもしれませんわよ』


私が炎兄を好きなように。
お兄ちゃん達の誰かが、私を好いている、そんな含みがあるとも取れる言葉。……だと、今更ながら思った。


―― 『上辺の言葉じゃなくて、その言葉が何で出てくるのか……』


玉姉はそれがヒントになる、と言っていた。

普段、ふざけ続けていた三番目の義兄。
その頻度が増したのは。

(――雄兄や、蓮兄が居なくなってからだ)

エピソード187→←エピソード185



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (76 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
74人がお気に入り
設定タグ:マギ , 練紅炎、練紅覇 , 煌帝国   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません(汗) 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです! (2014年10月5日 13時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね!!楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください!応援しています!! (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます! なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが(汗) 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します!(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい!とっても楽しみにしています! (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます! 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません(滝汗) オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので! 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします! (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一花 | 作成日時:2014年7月25日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。