エピソード183 ページ45
「魔導士の皆さん! 今から、土だけでなく岩も飛んできます! 重力魔法で砕いてください。砕いた後の処理は、私が責任を持ちます!」
今は、事業の指揮の最中。
普段、魔法杖として使っている槍は持っていなかった。
でも。
やるしかない、と腹をくくって腕を魔方陣の方に突き出した。
魔力(マゴイ)を手のひらに集めるよう集中する。
と、その時。
???「――これを使え!」
男性というにはまだ少し若い……そんな声が耳に響いた。
ひゅんっ、と風を切る音とともに、長い棒状の影が飛んできた。
反射的に腕を天に伸ばして、それを掴む。
「……!」
それは、何の飾り気もない槍。北東郡で生産されているのであろう杉の柄は特に加工もされておらず、肌なじみがいい。
長さ2メートルほど。その先に刃渡り5cmの鉄の凶器が伸びている。先端はまっすぐぴんと尖っていて、持ち主……あるいは、鍛冶職人の丁寧な仕事がわかる。
「あ、ありがとうございます!」
私は槍の飛んできた方を見た。
そこには、住民を避難させる兵士達。
――人が多すぎる。
誰がこの槍を投げてくれたのかわからなかった。
兵士の人たちは兜をかぶってて、顔も陰になっているから見知った人なのかもわからない。
ただ、先ほど聞こえた声はどこかで聞いた気がした。
もっとも。
今はそんなこと考えている場合じゃない。
私はぺこりと頭を下げて、魔方陣に向かいなおした。
(――やっぱり、杖がある方が集中しやすい)
杖がなくても簡単な魔法なら使える。
でも、うまく体内のルフを外に出すには、『杖』という軸があったほうがやりやすい。
私は兵士が大事な武器を投げてくれた機転に感謝しながら、その柄をぎゅっと、握りしめる。
目の前では、複数の岩の塊が魔方陣から現れたところ。
黒銀の輝きで辺りを塗りつぶしながら、人工魔導士の人達が岩を砕いていく。
「酸化灼熱槍(アスファルハール・アルサロース)!!」
叫んだ。
通常ではお目にかかれない青い炎が、槍の柄の先端に点る。
辺りの酸素を凝縮させて、いつも使うような熱魔法よりも、もっと熱い……青い炎を作り上げた。
それを、ジュダルが遊びでよく氷柱を辺りに飛ばしているみたいに……砕け散った岩の欠片にめがけて一気に飛ばす。
――まるで流れ星みたいに。
青い炎が光の粒となって辺りに散っていく。
流れた炎は岩の欠片にとりついて、硬いそれを墨に変え……消えていった。
「――これで終わり?」
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません(汗) 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです! (2014年10月5日 13時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね!!楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください!応援しています!! (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます! なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが(汗) 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します!(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい!とっても楽しみにしています! (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます! 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません(滝汗) オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので! 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします! (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月25日 20時