エピソード177 ページ39
蝶「……例外?」
「えぇ。この郡の方が作物の不作により、税を納めきれない懸念は前回ここに来てよくわかりました。それでも、一度例外を作ってしまえば、他の郡で同じことが起こった時も、同じように対処しなければ、民の不興を買うでしょう」
蝶「ふふっ、そうですか。ならば、どこでも税を下げるとはなぜ言わなかったのか、お聞かせ願えますかな?」
(あぁ、まただ)
この郡で初めてこの人と問答したとき。私の弁を愉快そうに聞いていた彼の目の色を思い出す。
正に、今目の前にいる蝶凌さんはあの時と同じ目。
(――この人は)
ふと、私の心にある仮説が浮かぶ。
自郡のためにこそすべてをかける人だけど。
ただ純粋に、為政者としての思想を語るのが好きなのもあるのかもしれない。
だって。
最初にこの人は言ったもの。
――『うふふ。ようこそ、私の思索の場所へ』。
(まぁ、どちらにしても、私を使えると……煌帝国は北東郡の益になると思ってもらわなくちゃいけないのに変わりないけれど)
たぶん。
私の考えは、今までの蝶凌さんとのやりとりから、彼を失望させないだろうという手ごたえを感じてきていた。
だから。
少しリラックスしてきた。
ふー、と軽くため息をついて。
肩の力を抜いてから、朗らかに語ることにする。
「税は、煌帝国維持のために必要なものです。それがあるから、円滑な政(まつりごと)が行えます。国を守るため、国土を広げるため、公共事業を起こすため……全ては煌帝国の未来を創るためになくてはならない資源です」
蝶「……」
「そして、この国の未来を作ることは、この国に生きる民を豊かにすることに繋がります。ただ、目の前で苦しんでいる方々への対処をするだけでは、国の未来は築けません。私は皇女ですから……もっと、ずっと将来(さき)を見据えた判断が必要なのです」
(――これから炎兄の理想のため、更に版図を広げる我が国だからこそ、軽率な判断はできない)
私は炎兄への思慕だけは心に閉まって、更に続ける。
「これから、この国はより大きく発展すると断言します。そうなれば更に民は増える……。私は煌帝国の皇女の肩書を持つ以上、その全てに責任を負わなくてはなりません。民なくして国は成り立たないのですから」
蝶「……」
蝶凌さんは長い口上に一切の口を挟まず、黙って耳を傾けていた。
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません(汗) 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです! (2014年10月5日 13時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね!!楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください!応援しています!! (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます! なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが(汗) 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します!(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい!とっても楽しみにしています! (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます! 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません(滝汗) オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので! 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします! (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月25日 20時