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エピソード171 ページ33

そこは木の板か敷き詰められた広い部屋。今は暗い。
ただ、沢山の格子窓から入る月明かりはまぶしい。

孝「こちらです」

部屋の奥にある鉄の扉を孝里が開くと、バルコニーのような場所が見えた。

「はい」

私は促されるまま外に行く。
ざらついたまだ冬の香りの残った冷たい夜風に吹かれながら。
キィキィとなる赤い床板を踏む。周りは赤と金色の模様の円柱がちらほら。
ところどころに玉があしらわれている。
角を曲がると、三角の見張り台が外に向かって飛び出していた。その屋根は城の最上部からなだらかな線を描いて覆いかぶさる形。
ふと見ると、その最上部……外からは2階建てだと思っていた建物の中にある3階部分。……屋根裏、ここでは天守閣というべきか。
そこに入るための細い樫の木の梯子があった。
両脇に松明と番をする兵が二人。
私達を見て恭しく礼をした。

「お疲れ様です」

私はにこやかに会釈したけど。
孝里殿はさっさと梯子の前に立って、上へ声を上げた。

孝「おや……父上! 煌帝国第九皇女、練A様をお連れしました」

蝶「うふふ。ご苦労様。さっそく昇っていただいて。あとはお茶の用意をお願いね」

見えないけれど、確かに蝶凌さんの声が降ってきた。

孝「私はやはり反対です!」

蝶「……。今はその話をする時ではないわ。お姫様に上がっていただいてちょうだい? あなたは私の息子……、分かっているわよねぇ?」

孝「……分かりました」

孝里殿は梯子の上に声をかけるのをやめ、私に向き直った。裾の袂から取り出された二本の金糸。その端には小さな銅色の鈴飾り。

孝「これで袴の裾を縛って上がってください」

上は就寝用のラフな白地の衣だが、下はまだ脱がずにいた赤い袴だった。……普段は銀糸で結んで男の子の脚絆のように、動きやすくしている。
私はおとなしく紐をもらって結ぶことにした。
リーンと涼やかな音色が響く。

(なるほど。下手な動きはできない、ってわけね)

梯子の狭さから、上に登れる人数は限られているのだろう。
おそらく蝶凌殿と二人きりのはず。
でも、私が何かしたら……鈴が通常とは違う乱れた音を発する。
そうすれば兵士なり、今この紐を渡してくれた少年が反応をするのだろう。

(親が親ならその子もなかなか……)

頭がいい、と思った。
私と蝶凌殿が二人きりになるのが面白くないのだろう孝里殿が、父親の安全のために考えた方法だと思うと、微笑ましい。
身内を想う気持ちは共感できるから。

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設定タグ:マギ , 練紅炎、練紅覇 , 煌帝国   
作品ジャンル:アニメ
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません(汗) 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです! (2014年10月5日 13時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね!!楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください!応援しています!! (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます! なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが(汗) 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します!(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい!とっても楽しみにしています! (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます! 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません(滝汗) オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので! 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします! (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月25日 20時

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