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エピソード168 ページ30

*
――北東郡の夜はまだ冷える。
私は来賓用の建物にいた。
その中でも比較的大きな、暖炉のある寝室。パチパチと穏やかな音で枯れ木がはぜる。すると石の囲いの中に金の火の粉が舞い踊る。
そのたびに、部屋がぬくぬくと暖かくなる気がする。
私はその暖炉を背に、大きな濃茶のテーブルの前に座っていた。

中央政府から来た者にはそれぞれ寝室が与えられていて。
今日決めた役割分担を果たすため、今晩は早めに就寝することになっていた。
私や紅覇お兄ちゃん、それから蝶凌さんをはじめとする現地の政務担当の人たちは、兵士や平民を指揮する。……雪を集める場所に選んだ、北東郡の最北端の山の麓に、北東郡全体に融けずに残った雪を集めるために。
魔導士達は、その場所に魔方陣を敷き、西夏郡に雪を転送する術式の準備を行う予定だ。

私はそんな一連の仕事の流れを、テーブルの上に乗せた水晶の勾玉に向かって話していた。

「……そんなわけで、こちらは明日からさっそく仕事に取り掛かります。そちらはいかがですか?」

私は勾玉の向こうで話を聞いているであろう、忠雲に西夏郡について聞いた。

忠「……さすが、A様。仕事が早いですね!」

「……。残念ながら、私の仕事が早いというより、蝶凌さんの手腕が大きいかと思います」

私を褒め称える忠雲の言葉に、ため息交じりの笑いを返す。

「ですが、せっかくここまで準備をしていただいたのですから、仕事は迅速に進めたいと思います」

――そう。
お膳立てしてくれたのは蝶凌さんでも、ここからの仕事は私も関わる。迅速に、確実に。北東郡のため、煌帝国のため。……ひいては未来の皇帝、炎兄のため、私は最善を尽くそうと決めていた。

忠「わかっています。こちらは、貯水池になる場所の穴を掘り、掘った土を土嚢にするため、まずは現地の兵士を使うことを役人に承諾いただきました。同時に北東郡からの転送魔法の受信地を傍に作ります」

「では、いったん雪は受信地に移して、現地の方が穴に運ぶということですね?」

忠「えぇ。なにぶん事が急だったものですから、現地では人員の確保が不十分でして。まずは明日、兵士たちが穴を掘ります。その間に私は現地の政務官とともに、西夏郡の平民の助力を得るための布令を発表します。魔法に関しては仁々殿に全面指揮を託すことにしました」

「そうですね。いきなりのことで現地は混乱もあるかもしれません。そこは忠雲殿の手腕で納めていただければと思います」

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設定タグ:マギ , 練紅炎、練紅覇 , 煌帝国   
作品ジャンル:アニメ
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一花(プロフ) - キャンディさん» コメント有難うございます。亀更新の上、返信まで遅くなり、申し訳ありません(汗) 面白いと言ってくださり嬉しいです。この作品は、連載作品の中で恐らく一番、趣味全開で書いてます。更新頻度が都合で減ってますが、宜しければ今後もお付き合い下さると幸せです! (2014年10月5日 13時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
キャンディ - とても面白い話ですね!!楽しく読ましてもらっています。これからも更新頑張ってください!応援しています!! (2014年9月23日 14時) (レス) id: 5d912ff5a3 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» ありがとうございます! なんだか、書いていると話の堂々巡りをしている気もしますが(汗) 楽しんでいただけるように、お話も少しずつ、前に進めますので、これからも宜しくお願い致します!(^-^) (2014年9月14日 18時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)
グーミリア - はい!とっても楽しみにしています! (2014年9月11日 21時) (レス) id: 9d3eb75538 (このIDを非表示/違反報告)
一花(プロフ) - グーミリアさん» コメント有難うございます! 作品を良いと仰ってくださり、感謝します。そして……更新滞っていてすみません(滝汗) オフの諸事情で、更新頻度が減ってますが、途中放棄はしませんので! 今までより、頻度はぐっと下がりますが続けますので、よろしくお願いします! (2014年8月31日 12時) (レス) id: efaaeba1ca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:一花 | 作成日時:2014年7月25日 20時

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