・ ページ17
されるがまま肩を貸して、くせっ毛な髪を撫でてみる。快斗くんがぐりぐりと頭を動かした。
髪の毛が首に当たって擽ったい。こら、と快斗くんの肩をトンと叩くと、顔を上げてへらりと笑った。
「今日はバイトなかったのか？」
「ううん、ランチタイムだったよ」
「ふーん？なら安心だけど」
…クローズ勤務の時の帰り道の事を言っているのだろうか。
正直、私の週3回ほどの夜道一人歩きよりも怪盗キッドの時の事を心配して欲しいのだけど、きっと言っても聞かないんだろうな。
確かに1人で歩いてる時は音楽を聴きながらだけど。
そういつもいつもボーッとしてる訳では無いのだ。
「快斗くん心配し過ぎ。ちゃんと気を付けてるからね」
「ほんとかよ」
じとり。全然信じてくれない。
本当に気を付けてるんだけどな。大学の友人によると、米花町は何故か推理小説に出てきそうなレベルで謎めいた事件が多いらしいし。
…噂では、その現場には必ず黒縁メガネを掛けた小学生の男の子がいるらしい。座敷童子かなんかか。
私としては、事件に巻き込まれるのは嫌だから不審者には気を付けている。
…そんな事を快斗くんに話すと、みるみるうちに遠い目になっていった。
「…どっちかつーと、米花町よりメガネのボウズに気をつけた方がいいぜ？」
「えーっ！？なんで！？やっぱり座敷童子！？」
「いや、生きてるけど」
アイツはまじでやばい。真剣な表情でそう言う快斗くんに、私は静かに頷いた。
・
いつの間にか雨は止んだようだった。
そろそろ帰る、と快斗くんが立ち上がる。
ふわりとマントが揺れた。シルクハットの上で寛いでいた白鳩が慣れたように快斗くんの肩に止まる。
快斗くんはその鳩の頭をちょん、と撫でるとジャケットの内側にしまい込んだ。
シルクハットを被ってベランダに出ると、そこに立っているのは怪盗キッドだ。
「じゃな、腹出して寝るなよ」
「…快斗くんもね」
せっかくキッド様なのになぁ。発する言葉はデリカシーの欠片も無い。
でも、そんな風に素を見せてくれるのが嬉しいのだから、どうしようもないよなぁ、と思う。
ふふ、と1人笑う私を快斗くんが不思議そうに見る。
どした？と訊かれたけれど、なんでもないよと答えて。
「おやすみ…」
私の肩に手を置いた快斗くんが、そっと屈んでキスをする。
へらりと緩んだ私の顔を見て、快斗くんの口元に緩く弧が描かれる。
月の光に照らされて、快斗くんの髪がキラキラ輝いて見えた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
snow(プロフ) - ハルさん» 私もよく解りません。赤井さんもなんとなくです。安室さんの周りも掘り下げると周りイケメン率が高いんですよね。安室さんは安室さんで、また沼にハマって行く感じです。赤井さんは、安室さんと違った格好良さが…。 (2020年5月22日 23時) (携帯から) (
レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。こちらも読んで下さってたんですね！戦闘能力の高い蘭にセクハラする快斗くんは凄いとしみじみ思います…捕まらなくて良かった。コナン、あむぴも赤井さんもよく分かってない(小声)のですが、のんびり勉強しようと思います( ´ ▽ ` ) (2020年5月22日 23時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 今年のコナンの映画も楽しみですね。今回の最後のシーン、素敵でした。羨ましい！最初、赤シャムの記憶が飛んでいて、思い出せなかったんですが、彼、蘭ちゃんにセクハラしようとしてましたね。ある意味、新一君より強者ですね。 (2020年5月21日 10時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 完結おめでとうございます。寂しいです！ライブ、ダメになったんですね。私も、舞台が、今年全滅しました。コロナめー！！悲しすぎて、泣けます。 (2020年5月21日 9時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - さらさん» さらさん初めまして。コメントありがとうございます！キッドカッコイイですよねぇ( ´ ▽ ` )さらさんもお身体にお気を付けくださいね。また遊びに来てください^ ^ (2020年4月15日 21時) (レス) id: c9566d77ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
