エンドロールのその後で。【黒羽快斗】

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するりと右手が離された。それを狙って快斗くんに飛びついて抱きしめる。


「うおっ」


突然の行動に驚いたらしい快斗くんだったけど、私を受け止めるとぎゅっと背中に手を回してくれる。


「ずーっと前から、盗まれてますよ？」

「…おや、それは嬉しいですね」


トクトクと、心臓の動きが伝わる。

首に巻き付けていた腕を離して快斗くんに向き合うと、快斗くんの蒼い瞳と視線がぶつかった。


「快斗くん、おかえり」

「ただいま、A」


背中に回していた手で私の後頭部を支えた快斗くんが、ゆっくりと私の唇にキスをした。

パサリ。白いシルクハットが落ちて、どこに隠れていたのか、バサバサと白鳩が舞う。


「わっ！」

「はは。驚いたんだな」


白鳩はシルクハットの上に着地して、優雅に寛いでいる。

その様子を見て、思わず2人笑う。快斗くんが無事に帰ってきたんだと、嬉しくなった。


・


ベランダに出たままだった快斗くんを部屋に入れる。

…そういえば、お風呂出たところだからすっぴんだし、なんならリラコと高校の文化祭のTシャツという究極の部屋着姿だ。加えて寝起きである。

こんな格好の私を盗むなんて言う怪盗キッドが面白くて思わず笑うと、快斗くんが「なんだよ？」とジトリと私を見た。


「今日会えると思ってなかった」

「言ったろー？終わったら会いに行くって」


けけけ。イタズラが成功した子供のような笑顔で快斗くんが笑う。

…確かに、そう言ってたけど。まさか真夜中に来てくれるとは夢にも思わない。


「せめて事前に連絡くれたっていーじゃん」


そしたらもうちょっとマシな格好で待っていたのに。

そんな思いを込めて呟くと、快斗くんが呆れた表情で私を見る。


「あのなー、LINEしたぜ？誰かさんはグースカ寝てたみてーだけど」

「うそぉ」

「ホントだって」


まじか。軽率にベッドに寝転んだ2時間前の私を恨んだ。会いたかった相手がやって来てますよー。


「全部、無事に終わったぜ。借りも返したしな」

「借り？」

「ちょーっとな」


ちらりと快斗くんが白鳩を見る。

鳩さんに何かあったのか。快斗くんも鳩も元気そうなので安心だ。


「そーいや、Aの友達の推理。あの毛利小五郎と並ぶ名推理みたいだぜ」

「まじで？」

「まじで。名探偵もギリギリまで解けなかったみたいだし、今回は俺の勝ち」


へへへっと嬉しそうに快斗くんが笑う。

もう一度お疲れ様、と呟くと、快斗くんがとん、と頭を肩に載せてきた。

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