エンドロールのその後で。【黒羽快斗】

＜3＞夜空を駆ける ページ18

「じゃあ気を付けて帰ってねー！」

「お疲れさまー！」


　店の外に出ると、二次会に行く人と帰る人で賑やかだった。

　普段はバイトに行くか部屋でゴロゴロするか、たまーに快斗くんと出掛けたり、な夏休みを送っている私だけど、たまには食事にも行く。

　今日は、大学の同じ学部の同期や先輩達とのご飯。あんまり乗り気じゃなかったけど、先輩と交流しといた方が試験の時助かるよ！ なんて友達のアドバイスに流されて参加する事にした。


　……実は、快斗くんには内緒だったりする。

　やましい事なんて何も無いけど、過保護な快斗くんの事だ。男の人も居る飲み会なんて絶対ダメと言われるのは安易に想像出来た。

　それを説得するのも大変そうだし、でも出席すると言ってしまったからキャンセルは出来ないし。もとより男の人と積極的に話すつもりも無いから、一回くらい良いかなーなんて、軽い気持ちでやって来た。


「Aちゃん、家江古田だっけ？」

「あ、はい」


　私を誘ってくれた友人は気持ち良さそうに酔っていて、二次会も参加するようだった。私は帰るつもりで、知り合った先輩たちに挨拶していると、同じテーブルを囲んでいた先輩が話し掛けてくれる。


「俺もそっち方面なんだよね。一緒に帰ろうよ」

「そうなんですか。ありがとうございます……」


　にこり、と爽やかな笑みを浮かべた先輩は、私の隣に並んで駅へと歩き出す。途中、「A帰るの？」と驚いた表情の友人に頷いて手を振ると、友人は神妙な顔で手を振り返してきた。


「Aちゃんて、サークルとか入ったりしてるの？」

「サークルは何も。バイトが忙しくて」

「やっぱり？ なんか慣れてなくて初々しかったから」


　夜の生ぬるい風に当たりながら、先輩の質問に返事をする。なんでそんなに思いつくんだろう？ ってくらい様々な事を先輩が質問してくれているおかげで、沈黙の気まずい空気にならなくて済んでいる。


「……あれ？ 白鳥？」

「白鳥？」


　こんな都会で、しかも夜に？

　先輩の視線を追って空を見上げると、ビルの灯りと夜を背景に、三角の翼を広げた大きな白い鳥が飛んでいる。……うん。鳥じゃないな。

　快斗くんだ。今日のお仕事は汐留だったのか。

　テレビもスマホのニュースも、キッドが予告状を出したなんて報道してなかったのに。少し寂しく思いながら白い翼を目で追い掛けていると、「Aちゃん」と隣から先輩が私を呼んだ。

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