貴公子たちの素敵な夜 朔間零 ページ40
朔間零 月のない夜
真っ赤に揺れる炎の向こうに、燭台の明かりよりももっと紅いルビーが静かにたたずんでいる。
宝石は、光を受けてこそ輝くものだが、この紅玉は闇の中で自ら光を放っているようにも見える。
Aの主人は年齢不詳だ。
ご自分では吸血鬼だと言っておられるけれど、本当にそうなのかは分からない。しかも吸血鬼だという割に、血が苦手らしいのだ。
住み慣れた王都の家を離れ、朔間家の本領へとやってきたのはほんの数日前。
この地は王都からいくらか北の方にあって、そのせいか夜になるのも少しだけ早い気がした。今日は晴れているというのに月がなく、燭台の明かりだけが部屋をぼんやりと照らしていた。
彼はあまり積極的には都に出てこないお人なので、結婚することが決まってから顔を合わせた。だから夫婦とはいえ他人同然である、はずだ。
世間の人は彼を吸血鬼だと思っているらしい。
今のところ吸血鬼らしいところと言えば昼間は寝るばかりだということだけで、Aは彼の言うことを信じてはいなかった、というより吸血鬼だろうが人間だろうがもはやどちらでもよいと思っていたのだ。
Aはソファーへ腰を下ろしてふうと息をつく。
とりあえず血をすべて養分にされてしまうようなことはなさそうだ、と安心した。
彼は娘ができたようなものだと思っているのかもしれない。さすがに親子ほど年は離れていないとは思うのだが。
「おや嬢ちゃん、どうしたのじゃ、ボーっとしておったようじゃが」
誰のせいでしょうね。
ソファーの隣がすんと沈んだ。見上げれば
毎度毎度、それはそれは目の毒で、あとどれくらい心臓がもってくれるのだろうと、そんな心配さえしている。
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さなえ(プロフ) - フラッペさん» コメントありがとうございます。お褒めに預かり光栄です。細かいところにこだわって書いてみました。 (2018年8月18日 16時) (
レス) id: b33fb32224 (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - お話の内容が濃くて私的には面白い物語でした。こういう細かな文章が好きで、なんか一つ一つに感情がこもっているというか……まぁ、とにかく良い話でした。 (2018年8月16日 1時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さなえ@Ｌｏｖｅ伊織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/sanaeHome/
作成日時：2017年7月29日 16時
