目と目があえば恋に落ちる【あんスタ】

40.私にできること ページ40

「…なんだよ、いつもより調子いいじゃん」

放送からは、伸び伸びとした漣くんの歌声が聞こえてきてつい笑みが溢れる。

ありがたいことにオープニングから出番の多いEdenは、ステージ上で絶賛パフォーマンス中である。その勇姿を目に焼き付けられないことを恨みつつ、私は一人慣れないインカムに手を添えて、関係者通路を行ったり来たり。


SSは出場者の出入りや衣装チェンジも多くて、誰の差し金かは知らないが普段は客席待機の私までも手伝いに駆り出されたのは数日前のこと。
お陰様で夢ノ咲の生徒さんにも認知されていて、そりゃまぁ仕事がしやすいですよ。誰の差し金かは知らないけどもね！！！！！！



近くにスタッフ休憩用のパイプ椅子を見つけて、少しの間座り込む。会場映像が映しだされたテレビ画面を眺めれば、いつもとは違う、キラキラした笑顔を振りまくアイドルとしての彼らに少しだけドキッとして。

ペチンと頬を叩き、私も気合を入れ直した。


…次はTricksterだったか。これが終わったらEdenの衣装替えの手伝いをして、その次は他のユニットの補助に回って……
頭の中でぐるぐるとこの後の予定を整理して、立ち上がる。


その時だった。


心地の悪い音とともに、照明が落とされたステージがテレビ画面に映し出される。
けれども次の瞬間には復旧し、会場内スクリーンには、予定にも聞いていない不気味なスライドが映されて。


「…なに、これ」

演出でもあり得ないような内容に言葉を失う。
テレビに映し出された彼らの表情を見ても、アイドル本人たちにも知らされていない演出らしく、場馴れしているはずのEdenの四人も流石に慌てた表情を浮かべている。


…何とかしなくちゃ！


そう思って勢い任せに立ち上がっても、演者でない私はステージ上には上がれないし、放送を入れる事もできない。



………それなら今、私にできることは？



気付けば楽屋に向かって走り出していた。
アンコールまで止めることのできないステージ上は一先ず彼らに任せて、私は私で、この件の犯人を追うべきだと思ったから。

恐らく犯人は "こちら側" の人間だ。

それでいてスクリーンを弄れる…ということは、スタッフ側に紛れ込んでいる。はず。



楽屋に入り、真っ先に開くのは七種くんの鞄。

若干の罪悪感に苛まれながらも彼愛用のタブレットを取り出して、画面を開けば何個かの監視カメラの映像が映しだされる。
多分、本番前に彼が見ていたのはコレだったんだろう。


一つ一つを注意深く見ていれば、その中に一つ、見覚えのないスタッフ数名の映像を見つけた。


「…もしもし、立花です。
　協力して欲しいことがあるんだけど＿＿＿」

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