目と目があえば恋に落ちる【あんスタ】

29.夏!晴天!ライブ日和! ページ29

「気合い入れていこーう！！」
「おー！」「…おー」

ニッコニコな日和くんとクソほど無表情な漣くん、そしてピカピカと点滅し続けるペンライトを首からぶら下げた私という、なんともチグハグな玲明生三人組で円陣を組んで、あと数分後という出番に向けて気合を入れ直す。


一週間なんて早いもので、気付けばサマーライブ当日になっていた。
屋外ステージだから少し心配してたんだけれど、今日は雲一つない晴天。ステージの向日葵やキラキラとしたスクリーンが何だか無性にワクワクさせて、彼らの色違い衣装もよく映えている。


…まぁ、他校生ともあって、私の今日のお仕事は観客席から見守るだけなんだけども。

彼らがスタンバイするのを見計らって踵を返したその瞬間、「Aちゃん」なんて優しい声がして、本番直前にどうしたのかと振り返る。


「有難うAちゃん。毒蛇のせいではあるけど、一週間も付き合ってもらっちゃったからね。」


そう言って、日和くんは困ったように、けれども嬉しそうに笑った。


「幼馴染且つ同級生として、本当は日和くんの方から頼ってもらいたかったんだけどね」
「…」
「…なにその顔！黙って目キラキラさせないでよ！」
「もう！ぼくの幼馴染は仕方ないね！ハグしてあげる！」
「頼んでない！！！」

他校で何やってるんだとは思いつつ、余りの暑苦しさに叫ぶ。本当にハグしてくるな暑い！！夏！！快晴！！ここ外！！！
ライブ前だけど本当に手出るよ！？なんて脅せば、日和くんは観念したようでぴたっと止まる。…ただし、私のことは抱きしめたまま。


「…ねぇAちゃん、頑張れって言って」


日和くんは私の肩に顎を乗せてそんなことを呟いた。

手慣れてるねキミ…とか思いつつ、照れくさくて「今日の日和くん、なんか甘えん坊じゃない？何歳ですか？」なんてついつい煽ってしまう。


「甘えん坊でもなんでもいいね！でも、ぼくは今Aちゃんに頑張れって言ってもらわないと頑張れないんだね。」

ふふん、なんて吐息混じりの可愛らしい笑い声が耳に残った。
…こういう時は何言っても聞かないから、最早無駄な抵抗はやめて彼の背中をぽんぽんと優しく叩く。


「頑張れ日和くん、ちゃんと見てるからね。」

こくり、黙ったままだが、彼が頷く感覚。
…と思ったら、日和くんは勢いよく私から離れ、いつも通りのニコニコ笑顔で「そろそろジュンくんが怒りそうだね！頑張ってくるね！」と颯爽と舞台裏に走っていった。


そんなに心配しなくても、ちゃんと見てるよ。

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