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「アイツが10年前に俺のとこに逃げて来た時、俺がこの子を守ってやるんや、って親心みたいなもんが芽生えてな。」
「……」
「高卒認定試験受けて、大学には行かないでそのまま自分で就職先見つけて来て。初任給で一丁前に焼肉奢る、なんて言いやがって。」
俺が知らない北山を語る大倉さんの口調は柔らかかった。
俺が決して立ち入ることを許されない時間。
北山が町から居なくなった空白の10年を、2人はこうして埋めて来たのだ。
「でもな、何にも変わってないんや。10年前、藤ヶ谷くんの目の前から消えた消えた宏光も、今の宏光も。何にも変わってない」
「……見た目、って意味ですか？」
「まあそりゃ童顔やけど、今この会話の流れでアイツのベビーフェイスについて話すと思うか？」
「ですよね、すみません」
「…本気なんか冗談なんか分かりづらいなあ」
童顔じゃなくて、宏光の心の根っこの部分。
そう大倉さんは言いながら目を細めた。
「親が離婚して、そのままたらい回しされるみたいに北山の家に置いて行かれて、そりゃトラウマもなるわ。
そのせいか、宏光は誰の助けも求めてないような奴になった」
「……」
「思い当たる節あるんちゃう？俺は10年前の宏光は知らんけど、アイツ、どこかで境界線引くやろ。こっからは入ってくんな、みたいなの。」
大倉さんの言いたいことが、よく分かってしまうのが悔しい。俺が目を瞑って見ないようにしてきた部分を、いとも簡単に曝け出せる大倉さんが羨ましい。
高校時代、北山の弱い部分を知らないフリをして、俺はただの友人として接して来た。それが北山にとって最善の策だと思っていたから。
「他人に弱みを見せるのも極端に嫌うし、本音は誰の事も信用してないんやろな。」
北山が初めて見せた涙を、10年前の俺は受け止めきれなかった。
ただ側に居て欲しい、
それだけじゃ北山の心を引き留める事は出来なくて。
北山は町を去った。
「なあ、藤ヶ谷くんは何でだと思う？」
「どういう意味ですか…？」
「何でアイツが誰の事も信用していない理由」
「…それは、そのトラウマのせいじゃ」
違うやろ、と言いたげな大倉さんの視線に、俺は言葉がつまった。そして恐る恐る口を開いた。
「…大切な人に、いつか捨てられるのが怖いから」
両親に見捨てられ、そしてあの町でも居場所が無かった北山は、また失う恐怖に怯えているのかも知れない。
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魚(プロフ) - xxxさん» コメントありがとうございます！高嶺の花シリーズ、本当はシリーズ化する予定ないまま書いたのですが意外と皆様から好評で嬉しい限りです…｡ﾟ(ﾟ＾ω＾ﾟ)ﾟ｡まだ完結はしておりませんので、気が向いたら書かせていただきますね！ (2019年9月7日 13時) (
レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
xxx(プロフ) - もっともっと続きを読みたいです！これからも頑張ってください！ (2019年9月7日 8時) (レス) id: 56bd14aad5 (このIDを非表示/違反報告)
xxx(プロフ) - 初めまして。高嶺の花シリーズ大好きです。 (2019年9月7日 8時) (レス) id: 56bd14aad5 (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - たいちゃんらぶさん» どれもこれも超未完成な中途半端な状態だったんですが、下書きにしておくのも何だかなあ…と思い、公開してしまいました…|･ω･`) いつも適当な更新スタイルですみません！笑 気が向いたらシリーズ化していきたいと思っております〜！ (2019年7月2日 23時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
魚(プロフ) - あんさん» お返事遅れてすみません｡ﾟ(ﾟ＾ω＾ﾟ)ﾟ｡！あんさんの作品を読んでいて、Kさんの方がFさんに対する独占欲強いんだろうな、と思い、Tくんと居るところを見てめちゃくちゃ嫉妬する…っていう展開を考えて書かせて頂きました笑 (2019年7月2日 23時) (レス) id: cc0d16b1ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：魚
| 作成日時：2019年4月14日 1時
