ゝ ページ9
──白金の、彗星。
その
後ずさったらしい黒死牟が三対の目を瞠る。
月の光に黒ぐろと髪が靡く。
羽織は白く、一分の隙も汚れもない。金糸で施された毘沙門亀甲の刺繍がチラチラ輝いた。
白金の刀は三十三間先までも照らすようである。
身震いするほど美しく、清廉な女がそこにいた。
「──娘……何者……」
「なんだ貴様悪徳業者か?この血を飲めばあなたも無敵の体に!ってか、やかましいわ。どうせ隅の方にやたら小さく“ただし昼間の活動は制限されます”などと書かれているんだろう。そういう健康商法は大概そうだ。騙されんぞ」
「……………?」
どっこい中身はこうである。
獪岳も黒死牟もきょとん……として、バカみたいに口を開いた。
基本的に口が悪いのであった。
やさしい言葉をかけることに慣れておらず、改善の兆しが見えないので吹っ切れた女である。もう面倒くさいらしかった。刺していく、と。私の言葉は日輪刀くらいの気概でいく……とは本人の談。
いやまあそれ以上に、上弦の壱を相手取ってこの態度。
あんまりにあんまりなので黒死牟は一瞬知り合いかと思って彼女の顔を見つめた。そもそも上弦の鬼以外に知り合いもいないのに。
そうしていて、ふと。
麗しき顔立ちに重なるものがある。
「…鬼に…身を
「……──」
「……生かされた…女…か……」
怒り狂う無惨の姿は記憶に新しい。
梵柱・四月一日A。
それを始末してみせると豪語した新参の男鬼。
童磨あたりと話しているのが聞こえたが、どうやら実の弟らしかった。どんなものかと思えば、多少よく食い、珍しい血鬼術を使う程度。
これがあの剣士の弟かと妙な気分になったことを覚えている。
それが無惨を裏切り、姉の始末どころか手助けをし、啖呵を切って死んだという。その胆力は認めよう。ああけれど、なんて
「愚かなり……」
「貴様、」
砂を蹴る音がした。
した、ときには、既に、
黒死牟の髪はザンバランと切り落とされている。
──それは、音さえ置き去りにした居合い。
一条の光が残り、尾を引いている。
奇も衒いもなかった。ただ佩いた刀を抜き、切ったというだけのことである。どこまでも単純で、だから疑いようのない実力を証左する。
「私の弟を侮辱するか」
それにこうまで圧倒される。
その事実が、ただ恐ろしかった。
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海神 瑠花(プロフ) - 再会ですか!?わーー!!このシリーズすっっごく好きで更新あったりしないかな〜って常々楽しみにしていたので嬉しいです!ありがとうございます楽しみにしてますね!! (6月27日 7時) (レス) id: 047a8ff329 (このIDを非表示/違反報告)
アホ毛50%(プロフ) - ノルンさん» 再開していきます…!応援ありがとうございます♡ (6月21日 22時) (レス) id: d38558f5f7 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 更新されとる!!!!!!!ありがとうございます!!! (6月21日 7時) (レス) @page7 id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
shashakidayo(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて何度も読み返してます!更新の予定はありますか?! (2021年1月3日 1時) (レス) id: 2928414592 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - スピード、センス、ギャグ、ノリ、何をとっても最高に面白かったです!!続きも楽しみにしてます!!! (2020年7月6日 17時) (レス) id: 6412d0e74c (このIDを非表示/違反報告)
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