ゝ ページ34
「ヤア、皆さん揃われましたか。」
右も左も天地も鷺も烏も分からぬ暗闇である。
その少年がそこに立っている、と分かったのは、ぼんやり光るように縁取られているからだった。
反応が早いのは宇髄だった。
戦場にて、一度感じたことのある気配。鬼だ。背負った刀を抜こうとして、──それがないことに気付く。暗器の類いもなくなっていた。何か細工をされたようである。
警戒をと周囲を見渡せば……同僚たちと目があった。
意識をなくしたままであるはずの煉獄までいやがる。そして、なんとまあ、柱どもは雁首揃えて丸腰であった。彼らともあろうものが、誰も彼も刀どころか隊服ですらない。まるで一般市民のような有り様だ。
「ウフ、ウフフ……」
「……何が可笑しい？」
少年の笑い方はとても上品だった。手を口許にやって、花びらをこぼすように声を上げる。
この場においてはこれほど異様な仕草もなかった。
悲鳴嶼が一歩前へ出る。
目を細めていて分かりづらいが、その瞳に文字はいない。であれば、丸腰だろうと彼にとって敵ではない。少年もそれを分かっているらしかった。距離を保つように二、三歩下がりながら、けれど少年は笑みを絶やさない。
「ウフフ。なんて恐ろしい」
「鬼だな」
「ええまあ、はい。ですが僕らは仲良くやれますよ」
「痴れ言を」
「あの人にとっては貴殿方も僕も変わりませんよ。立場を同じくするんですから、ねえ、そんなに怖い顔なさらないで？」
幼いかんばせに不釣り合いな表情だった。まったく、厭らしいことこの上ない。不愉快である。
……けれどなぜか、そこに、懐かしい面影を彼らは見た。
「……あの人？」
思わず口にしたのは胡蝶だった。
少年はゆったりとした動作でそちらを向いて、微笑む。
「四月一日Aですよ」
「……馴れ馴れしい。一体どんなつもりで」
「僕の姉さんですからねえ」
事も無げに言いきって、風が吹くように言葉は耳を通りすぎる。
さらに誰かが続けようとした。それを遮って、少年は手を叩く。パッと目の前が明るくなった。巨大な銀幕が広がり、それぞれふわふわとした赤い座席に座らされている。
「そこら辺はこれから観ていただきますとも」
まるきり何かのホールみたいに。
“観客”として押し込まれて、手出しができない。
「ここは姉の、……そうですねえ、精神世界とでもいいましょうか。ここにてひとつ活動写真でもご覧になっていただきたく、ご招待いたしました」
「つまらないモンではございますが、マ、見てやってください」
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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (
レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……！ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……！！長文乱文等失礼しました。応援しております……！ (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………？夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(？)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - もう超大好き！！！となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……！？と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜！！！と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
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