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誰そ彼 ページ33

 
 
 柱の面々にその伝令が言い渡されたのは、遊郭での事件からひと月が経とうかという頃だった。
 「旧梵柱邸にて謹慎中の四月一日Aを見張れ」
 というのである。ご丁寧に邸宅までの地図つきで、こんなのはもう家ついてってイイですか状態なのでドイツもコイツも目ン玉ひん剥いた


 ……平常で、あったなら。

 煉獄と宇髄がいまだに目を覚まさない。重症ではあるものの決定的な致命傷は負っておらず、もとの頑丈さを考えれば、一週間もすれば起きてくるだろう……とは。胡蝶の診断である。
 それがどうだ。
 宇髄は遊郭よりの帰還のち、治療を受けたまま目覚めない。煉獄などは生きていることが不思議だ。もう何ヵ月寝たきりなのだろう?彼は食事もせずにただ生きている。これは異常だった。

 悪夢みたいな現状に、Aが関わっているのだと。件の伝令は言外にそれを通達していた。けれどAは隠しも焦りもしないようだった。
 彼女はこのひと月、屋敷の奥で、刀を抱いて座り込むばかりである。


「煉獄たちの状態は血鬼術か?」
 水柱は問う。彼女は答えない。

「お体に不調などありませんか?」
 蟲柱は気遣う。彼女は眠らない。

「あんた、何を知っている」
 蛇柱は迫る。彼女は動かない。

「……なンも聞かねぇぞ、俺ァ」
 風柱は呟く。彼女は応えない。


「甘露寺と時透が、上弦に遭遇したそうだ」

 岩柱は告げる。
 そのとき彼女はようやく、目の前のものを見た。

 彼女の動揺が手に取るように分かった。あんなに堅牢だった壁は崩れて、足元に転がった瓦礫で身動きが取れていないみたいだった。
 ……目が見えていなくてよかったと思う。
 たとえそう察することができたとしても、きっと彼女は、そんな顔を見られたくないだろうから。


「二人は、」
「無事だ。大きな怪我もない」
「……そこに……若い、男の鬼がいなかったか」
「……どういうことだ?」
「髪が黒くて」
「四月一日、」
「わた、わたしの」

「まだ二人から話は聞けていない。大丈夫だ。ただ眠っているだけ──」


 ──夢。

 Aの目が大きく見開かれる。
 瞬間、彼女は姿を消していた。轟音。振り返れば襖や障子は真っ二つに刻まれ、裸足のままAは外へ駆け出している。

 足をもつれさせながら、必死に走っている。
 苦しくて息ができない。


 似ていると言っていた。
 列車の鬼と、似た能力を持つと。
 ……私にしか、行動を起こしてこないものだと思っていた。

 わたしは、



どぷん、と、音がする。



 

ゝ→←化野



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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