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 妓夫太郎は、みっつの計算違いをしていた。


 ひとつ。宇髄の体にさほど毒は回っていない。

 妓夫太郎の猛毒鎌が、宇髄の頭をかすったとき。
 文字通り“目にも止まらぬ”速さであった。
 妓夫太郎の動きと寸分違わず、しかし少し深くAはその傷口を刀にてなぞったのである。
 体を侵す猛毒は、けれどその身体に潜り込むより前に拭い取られた。もちろん全てではない。だとしてもそれは、強い耐性を持つ忍の体に決定打となり得ない。
 信じがたい話である。慢心ではない。だって上弦たる彼の前で──気配すら残さず刀を抜く人間がいるなど、夢にも思わない。


 ふたつ。宇髄は、この戦いの中で成長している。

 柱として完成された実力を持つ剣士である。それは人の域を外れて強い。しかしその上で、妓夫太郎には届かない。限界点が違う。種族の差。人ならざる力があれど、鬼には達せぬ悲しさよ。……
 そう思っていたが、どうだ。
 この土壇場で。こんな局面で。宇随は食らいついてくる!


 ──頭の中で、声がする。

『いや死ぬ。人間はこんなことしたら死ぬンだわ。アンタ人間なりたて?それか俺が産まれたてだ』
『そんな図体を引っ提げて泣き言を言うな見苦しい。未熟者に休憩する権利などないんだよ』
『……産まれてからこの方ずっと鍛えてきてんだが』
『忍としてだろう。切り替えろ』

 ああ、そう。
 それなりにやれたつもりだったよ俺は。

 暗殺だの奸計だの謀略だの、そんな世界で生きてきた。でも正面切っての戦いだって、少なくとも、アンタみたいな細腕の女に負けるつもりなんてなかった。
 血反吐吐かされるなんて思ってなかった。

『お前は今日から鬼殺の剣士だ』

 ……許されるなんて、思っちゃいねェよ。
 人を助けて、鬼を殺して。たまにゃ感謝されて。でもそれで、過去の何がなかったことになるなんて思っちゃいねェ。俺は人殺しだ。

『そのムダにデカイ胸を張れ。』
『ムダって』
『私に力負けするようではムダな筋肉だ。精進しろよ。鍛練をやめるな。無様を晒すは許さんぞ』

 踏み込む、踏み込む。
 毒の刃など恐れるものか。痛みも死も、どうだっていい。今ここで宇髄が倒れれば、愛しい嫁の身が危ない。後輩に尻拭いなぞさせられない。

『お館様の命とはいえ、この私が鍛えてやったんだ』
 

 そんな無様を、あの人は許してくれない。


 


 そして、みっつ。

 ──頸を落とされた。
 ああ、ああクソ、タダじゃ死なねぇ!

 最大出力の円斬旋回。ただでさえ虫の息のアイツらに……いいやそうでなくとも、これを防げる者などいない!


 

ゝ→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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