1,制約と契約 ページ3
人里離れたところに僕の家はある。
今日も食材を買って、山道を登って家に帰る途中。路地裏に倒れている人がいた。
ゴクリと唾を飲み、食べ物が入った紙袋を持ち直した。ゆっくりと近づいて屈むと月夜で良く見えてきた。
「あのー……大丈夫ですか?」
反応無し、というか生きているのだろうか?と不謹慎なことを思いながら脈を確かめようとした時、「……水」と聞こえた。
「み、水?!ちょっと待って
水って買ったけな」
家に帰ったら飲めるし、あんまり飲まないし……。と思っていたら奇跡的にあった。買い物した時の僕えらいぞ!
「これでいいかな…?」
そっと差し出すと倒れている人は乱暴に受け取った。ごくごくと飲む音が聞こえる。それほど喉が渇いていたのに、こんな場所で何を?
そんなことを考えていると”その人”が起き上がる。月夜に照らされ顔が見える。見えるところ全て傷だらけで傷が悪化しているところもあった。
「傷だらけじゃないか!病院に行こう」
”彼”は嫌そうな顔をした。もしかして注射とか嫌いなのかな?
「じゃあ僕の家に来る?どの道、君をこのままほっておくほど僕はひどいやつじゃない。」
ちょいちょいと手招きをする。肩を持って立つと結構軽かった。
「まずは服……。それから生活用品も揃えないとね。僕の家何にもないからさ、好きなもの買っていいよ」
___
「僕の名前はA。食べながらでいいから聞いてね」
そう言うとガツガツと口いっぱいに食べ物を頬張りながら彼は頷いた。ここまでの聞き分けの良さに正直驚く。それにあの時から一言も喋らないし……。
「君の名前は?」
「テゾーロ」
「家族とかは?どうしてあそこにいたの?」
普通に喋ってくれた!
その質問をするとテゾーロは何も言わなくなった。うーんと手を組んでテゾーロを見る。
さっき食べ物に僕の血を混ぜて傷は完全に治癒されてるけど、本人気づいてるかな。
ま、気づかない方がいいと思うけど。
「じゃあ、僕が死ぬまで一緒にいてくれない?」
「……………………はぁ?」
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年6月17日 2時