【BLEACH】自称"キュートアニオタ駄菓子屋店員" (ページ35)

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夜一が仕事で二番隊に戻ると言ったので、Aも一緒に家に帰ろうとしたが夜一に止められる。「お主ら、許嫁だというのにまだ一言も喋っとらんだろ。少しは仲良くせんか」と怒られて仕方なく残ることになった。気を利かせてなのか。銀嶺も居なくなって、縁側には白哉とAの二人っきりとなる。

「許嫁なんて堅苦しいよね。私らが決めたことじゃないのに」
「結婚(これ)で朽木家が安泰するなら安いものだ」
「言い方悪い。……けど、それもそうか。私には結婚しか役に立たないし」

はぁー、とAは溜息を吐き出す。
九条家の女として生まれた時点で生き方は決まっていた。何処かの貴族の家に嫁いで子を産む。当主にもなれないAはそれが役割だ。

「本当は私も当主になりたかったんだよなぁ」
「意外だな。Aは地位や権力(そういう事)には興味がないと思っていた」
「興味はないよ。けどね、旭兄様に当主なってから殺伐とした空気が変わったのが嫌。だから私が当主になって父様の時みたいに変えたい」

竜胆色の瞳から強い意志が感じられた。フッ、と白哉は小さく笑ってAに返した。

「Aなら九条家次期当主なれるだろ」
「無理無理。私、旭兄様より弱いもん」
「弱いなら鍛錬して強くなればいい」
「次期当主になれる白哉は簡単に言うなぁ。あの人に勝つ前に白哉との結婚の方が早いよ」
「やってみないと分からぬだろ。それに、Aは強いから直ぐに旭様を抜くとは私は思うぞ」

瞬きを繰り返してから、Aの顔には急激に熱を篭もる。歴代最年少で当主となった兄と比べられ、自分は小さなものだと認識していた。だからこそ白哉から強いと言われるとは思わなかった。

「そうだ。Aが良ければ明日から一緒に鍛錬するか？」
「……仕事終わりでいいなら」

Aは顔を俯かせる。
今まで人に褒められたとしても、それは九条旭の妹して褒められるものばかり。九条Aとして褒められるなんてなかった。生まれて初めて褒められる感覚はどうも恥ずかしいが、嬉しいという気持ちが溢れだす。

「……白哉ありがとう」

ボソリとお礼を伝えるAに、白哉は穏やかな表情で頭を撫でた。