第三十八夜 ページ38
三味線がべんと鳴り、琴がへろんと鳴る。
女がにこやかに誘い、男は酒と女に酔いしれてゆく。
艷やかな黒髪と相反する鮮やかな着物は、彼女を一層美しく見せた。
大きく広がった着物の裾は滑らかな脚を隠し、紅い唇が穏やかに三日月を描く。
貴「失礼しんす。」
期待を裏切らない凛とした声音で、美しい発音で言葉を紡ぐ。
沖「待ってたよ。中々戻ってこないから、迎えに行こうかと思ってたよ。」
伊「お疲れ様です。普段の仕事の他に、情報収集まで…大変でしょう。」
店の奥の奥、店の者しか知らない様な奥の部屋で二人の男が待っていた。
二人の顔を見ると、一層笑みを深くして微笑んだ。
貴「しっかり聞いて来んしたよ。意外と容易いどすなぁ。」
寒い冬には、熱い熱燗を。
ゆったりと上品に二人の徳利に注いでゆく。
沖「…どうだった?」
貴「そろそろ動く頃合いかと。新選組の内部を散々荒らせて満足そうどすなぁ。」
ふふふっと声を出すものの、彼女の瞳は笑っておらず冷たい雪の様だ。
伊「伊東達は、顔が広いですから。何処と繋がっていても可笑しくはありませんね。」
貴「だからと言って、あの歳さんが指くわえて見ているとは思えませんなぁ。」
沖「まぁ土方さんだし、何とかするだろうね。」
夜は更けてゆく。
彼女は知らない。彼女が戻って来るまで、誰にも分からない水面下で二人の男が火花を散らしていた事を。
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牡丹一華(プロフ) - ありがとうございます!中々進みませんが、頑張って作って行きたいと思っているので、よろしくお願いします! (2018年5月30日 19時) (レス) id: 3334f9c658 (このIDを非表示/違反報告)
結葉 - すごい楽しいです!続き、頑張ってください! (2018年5月19日 22時) (レス) id: e0601b0ff2 (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華(プロフ) - コメントありがとうございます!出来るだけ早く、作りたいと思っているのでこれからもよろしくお願いします! (2018年5月7日 0時) (レス) id: 3334f9c658 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆 - わー―!!続きが気になります!応援してます。頑張ってください! (2018年5月6日 23時) (レス) id: 8bff64fcc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牡丹一華 | 作成日時:2018年4月30日 1時