第三十一夜 ページ32
貴「…」
二つ目の箱を開けた時、部屋は静まり返っていた。
そして、恐る恐ると言った風に伊庭が声を掛ける。
伊「あの…嫌でした…?」
貴「…」
伊「菖蒲…?」
心配そうに見つめる伊庭を置いて、ゆっくりと中身に手を伸ばした。
貴「こんなにも素敵な物、貰ってよろしいんどすか?」
彼女の手に握られていたそれは、繊細な紅葉や季節の花達が鮮やかに飾った、簪と櫛だった。
それも箱まで用意して、上等そうに見える。
伊「気に入ってくれましたか…?」
貴「あい。勿論。こんなにも良いもの、中々出会えない…」
彼女の言葉を聞いて、ほっとした様にはにかむと頬を掻きながら話しだした。
伊「貴方が何時も差している簪とは全く違いますし、仕事柄差せないとも思ったんですけど、その二つを見た途端、貴方にぴったりだと思ったんです。」
貴「でも…差すにはここから出ないと…」
寂しげに目を伏せる彼女の言葉を遮る様に言う。
伊「連れ出せば良いんですよね?」
貴「え、えぇ…」
ふっと笑い、何も無い様に言う。
伊「それでは、今まで以上に仕事をしなければなりませんね。貴方を連れ出したいから。」
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牡丹一華(プロフ) - ありがとうございます!中々進みませんが、頑張って作って行きたいと思っているので、よろしくお願いします! (2018年5月30日 19時) (レス) id: 3334f9c658 (このIDを非表示/違反報告)
結葉 - すごい楽しいです!続き、頑張ってください! (2018年5月19日 22時) (レス) id: e0601b0ff2 (このIDを非表示/違反報告)
牡丹一華(プロフ) - コメントありがとうございます!出来るだけ早く、作りたいと思っているのでこれからもよろしくお願いします! (2018年5月7日 0時) (レス) id: 3334f9c658 (このIDを非表示/違反報告)
黒豆 - わー―!!続きが気になります!応援してます。頑張ってください! (2018年5月6日 23時) (レス) id: 8bff64fcc3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:牡丹一華 | 作成日時:2018年4月30日 1時