互いに ページ28
真っ白な病室。何度も見慣れたものの、やはり見るたび不安を感じる。
点滴針の刺さった腕は管が煩わしい。それでも台を引いてベッドの方へ歩いた。
両腕を広げたくらいの銀縁の窓に、固く肌触りの悪いシーツのベッド。
更には、何もないのに消毒液のアルコールの臭いさえするから嫌。
それに加えて、どうやらこの病室には私しかいないようで。
「こんなんじゃ寂しくて眠れないよ...」
ぼそっと独り言をいうと、後ろから玲名が荷物をもって入ってきた。
慣れているせいか、手際よくタオルやパジャマを選別してしまい始める。
「ねえ玲名...」
「私は病気じゃないから帰るぞ」
「うう」
「あと少しで風丸がすぐに到着するから、我慢しろ」
そんな気休めの言葉も私には効かず、気分はダダ下がりしていく一方だ。
うだうだする私を急かすように、玲名はベッドに寝かせてくれた。
風丸君が到着するのは、恐らく明日の夜ぐらいだろうか。
そう思うととても長く感じて、我慢するにもできない。
「それじゃ、私は一旦園に戻る」
「あ」
待って、と言いたかったが、呼び止めても何も言えないことは目に見えている。
言いかけた声を飲み込んで、ただじっと彼女の青い髪が廊下に消えていくのだけを見つめていた。
早く彼が到着してくれればいいのだが。それかもしくは...
マサキ君が元気になって、お見舞いに来てくれると嬉しいんだけど。
.
.
.***風丸side
同じ病院にいた医者達に見送られ、空港に入り無事飛行機に間に合った。
こんなスピードで各国をまわっていると、どうしても日本が恋しい。
どちらかっていうと、日本が恋しいというよりは日本にいる人や場所が恋しいのだが。
携帯を取り出し、彼女にメールを送ろうと画面を開く。
待受画面は、成人式で綺麗な振袖を着てはにかんでいるAの全体図だ。
いつ見ても可愛らしいその姿は、消えることなく画面にとどまっている。
つつっ、と画面の中で微笑むAの頬を指先で撫でた。
早く彼女の頬に触れたい。かなうことなら沢山抱きしめて上げたい。
きっと一人で不安だろう。いつまでたってもAは病院が苦手だから。
手首の電波腕時計で時刻を確認する。日本時間で夜ぐらいには病院に到着できるだろうか。
[件名 Re:大丈夫?
今飛行機に乗って、そっちに向かってるよ。明日の夜にはつく。少しだけ我慢しててくれよ
次会ったら、もう離れないだろうから。]
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします!よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます!もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます^^ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐奈 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時:2014年9月20日 20時