お別れ ページ27
不意にあの夢が燻った色で蘇る。モノクロっていうか、どこか寂しい色。
柔和に微笑む笑顔、真っ白なマフラー、それを埋め尽くす赤。
不思議と嫌な予感がしたり、畏怖したりすることもなかった。
懐かしい、とは思ったけど。
「ごめんね、もうそろそろいくよ」
ぽんぽん、と優しく頭に手を置くと、小さな体を起こして立ち上がった。
うっとりとしながらも、俺も立つ。ひと時でも一緒に居れたら、とドアまで向かおうとする。
「ああマサキ君。嬉しいけど身体に障るから。」
Aさんは手も出さないうちに俺を止めた。
ゆっくりと部屋のドアまで行くと、少しだけこちら側に顔を向けて微笑んだ。
貴方の綺麗な赤い髪。金魚の尾鰭。
両手のぬるい水から逃げて、何もない川の水面下を音もなく泳いでいく。
「お見舞い、絶対行きます。」
微笑んでいた顔は、少し驚いてからゆっくりと元に戻って廊下に消えていった。
ぱたんと控えめに扉の音がし、心から何かが引き抜かれたかのような気分になる。
金魚は美しい居場所へ、愛する金魚の元へ行く。
両手に冷たい水を入れ、手を冷やしてまでそこに連れて行った主人を置いて。
.
.
.風丸side
白いベッドの上に自分の衣服を放り投げる。それと同時に大きなクローゼットを開ける。
そこでゆっくり休んでいた黒いキャリーバッグに、ありったけ詰め込んだ。
結構雑多に入れては見るが、それでもバッグは簡単にしまる程入れるものがない。
必要最低限のものしか入ってないから、というより途中でダメになったものも多かった。
もう一度カレンダーを見上げる。赤い丸はもうすぐそこまで来ていた。
決心に近いものはついたが、Aの顔を見たら揺らいでしまうんじゃないかと思う。
今は目の前に本人がいないだけ何とでもいえる。ただいたら別の話だ。
深い溜息をついて、ベッドの上に広がった衣服も気にせず寝転がり、目を閉じる。
それに合わせ、少し前の頃のAが瞼の裏に薄く映る。高校生ほどだろうか。
制服がよく似合う細い体に、今より短い髪。それと真っ白な肌。
今より鋭く警戒心を感じさせる鋭い瞳が、鮮明に思い出されて身体を震わせる。
もうAは病院に入っただろうか。手術をすることに怯えているだろうか。
恐らくこの何日かで覚悟は出来ているだろう。あとは俺次第だ。
身体を起こし、下敷きになっていた服を詰め始める。
理由がどうあれ、Aに会うのが楽しみだ。
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夜月桜 - な、泣ける。・゜・(ノД`)・゜・。 小説でこんなに感動したことないです(>_<) (2017年3月29日 20時) (
レス) id: 889de71093 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» こちらこそよろしくお願いします！よろしかったら他作品もよろしくお願い致します。 (2015年1月3日 20時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - よろしくお願いします! 更新頑張ってください!! (2015年1月3日 16時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - Mmさん» コメントありがとうございます！もうすぐラストなので、この雰囲気を保ちつつ納得がいくエンドをかけるよう頑張りたいです。更新も張り切りますので今後もよろしくお願い致します。 (2015年1月2日 15時) (レス) id: 2725121de3 (このIDを非表示/違反報告)
Mm - すごく良かったです!読んでるとき涙がでてきてもう大変でした笑 更新待ってます＾＾ (2015年1月2日 15時) (レス) id: 5a5650f5d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2014年9月20日 20時
