-イナGO- 私は小さな猫を愛した。 -狩屋マサキ-

お返事 ページ16

「...もっと、ちゃんと考えろよ」

どこか冷酷に、苦しそうに細く呟いたその言葉。

いつも...というより、今まで感じたことないくらい、彼は怯えるように言っていた。

何が怖いんだろう？

私の問題なら、私が解決してあげられないの？

もう一人で考えさせたくない。

マサキ君が教えてくれたことが、ちゃんと私にもできるはずだから。






「私、可能性があるならいっぱい生きていたい。」

「...」

「今までの苦労かけた分、一郎太を幸せにしたいんだ」

「...それ、は」

「もう身体を言い訳にしたくない。君を、君と愛し合いたい。」




我慢していた言葉が次々に溢れる。思ってもいない言葉だって言ってしまった気がするくらい。

ギリ、と音が鳴るほど強くベッドのシーツを握り締める。

こんなままじゃ、君が報われない。そんなの嫌だ。

結果がどうなろうと、君の手で私に傷をつけて欲しい。





「... ... ...お前、ほんっと...バカだよなぁ」




携帯越しに、国境越しに。

涙で崩れたのか震える声で、私に何かを伝えようとしてくれる。

思わず私まで、喉がきゅっと苦しくなって。

...ああ、なんか、凄くすっきりした。ちゃんと伝えられたよ。






「...こっちは本当に怖いんだぞ」

泣いた幼い子供の言い訳のように、少し強く彼は反抗した。

それだけ私を大事にしてくれてる。

勝手な見解だけど、そういうことでもいいかな...？






「...最初は、私も怖い。というより、今も...怖い。

けど、一郎太に会えなくなって悲しませる方が、怖いし嫌なんだ」




しん、と声が止まる。それと一緒に異常な緊張感が湧いた。

彼にプレッシャーをかけてしまっただろうか。それとも嫌味に聞こえてしまっただろうか

彼の声を、変動を待つ。

一秒、二秒、三秒...だんだんと時間差は空いていく。





「...」

「え？」

「... ...辛い

お前に今すぐ会って、抱きしめてやれない。すごく、辛いよ」









ぐすっ、と何度も苦しそうに呼吸しながら君は言った。

ああ、本当に...優しいな、一郎太は。

その優しさに甘えきっていた自分が、とても恥ずかしいよ

だから、支えさせて欲しい。無理でもいいからそばにいたい。




「Aのバカ」

「...ごめん」

「...謝るところが、ホントバカだよな」




細いけど、強く返す低い君の声。

それでも、少しだけ明るくなったような気がして。

顔も見えないのに確信を得て、嬉しくなっていた。

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