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後悔した。見捨てれば良かったと。
オビトは庇って落ちていたけれど何かの拍子にその子がオビトの下敷きになることだってあった。もしかしたら、それで死ぬことになったかもしれない。
オレは助けたことを後悔した。
でもそれを思ったのは一瞬のことだった。
一人ではなにも出来ないほど非力なからだを抱いたとき、あんなことを思ったことを後悔した。
気づけばいつも通りオビトに悪態をついていた。
彼女の存在を忘れようと。
自分がそんなに酷いことを思ったことを忘れようと。
何を言っても返してくるオビト。懲りないなと思いながら言葉を紡ごうとした。
しかしそれは小さな手によって阻まれた。
無意識にギロリと睨んでしまった。
オレのせいで怯えた目をしたその子の瞳は美しかった。
目の奥は何処までも澄んで、瞳の色は青いのにまるで透明だと錯覚するほどだった。
火影邸に行くということになり、家に帰ろうかと迷ったけど、自分も着いていくことにした。
一度でも、一瞬でも死んでもかまわないと、彼女の小さな命を見捨てようとした自分が死ぬほど嫌だった。
言葉には出していないけれど彼女に謝りたい衝動に駆られた。
なんの償いにもならないけど、彼女を無事に送り届けることで少しでもこの気持ちが楽になればと考えたんだ。
夕陽を反射させ、本来とは違う色に光る首飾りはとても綺麗だった。
彼女と別れたあと、もう一度あの輝きが見たいと思った。
そしてこうしてまた、夕陽をぼーっと眺めている。
キラッという小さな眩しさに目を細めた。
それはどこかあの輝きに似ていて、違うと分かっていながらも、その光の元をたどった。
『かかしおにいちゃん!』
その輝きは本物だった。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月24日 1時