-12 ページ24
Aと過ごして3ヶ月が経過したある日、何時かのあの、感情の謎が解けたときの事を思い出させるような人混みの中を歩いていた。
天気は素晴らしく、雲はひとつもない。
でも太陽の光は容赦なく、何もしなくても額に汗が滲んだ。
Aが自分の影に入り、陽に当たらないようにしているのだが、今日は一段と日差しが強いから、いつも以上に気を付けながら歩いた。
暑くてたまらん!と愚痴を溢そうとしたが、立ち止まった後ろの存在が気になり同じように足を止めた。
初めての事で驚いた。
今までそんなことはしなかったから。
ワシは黙ってAの姿を見つめた。
なにか気になるものでもあったのだろうか。
『きれい・・・』
小さく呟かれたこの言葉を聞き、Aの視線の先をたどった。
その先には大きな水晶で作られた首飾り。
それをAは惚れるようにうっとりした目で見ていた。
初めてあれがほしいと、そうねだられるかもしれないと思い、心臓が跳ねた。
「・・・・・・、Aどうかしたか?」
知っているのに訪ねた。
言ってから聞き方を間違えたかもしれないと、後悔した。
“あれがほしいのか”と、ストレートに聞くべきだった。
『すいません』
しかし返って来てた言葉は期待とは全く違うのもで、熱を持った心臓は急激に冷めてしまった。
追求してもAは絶対に口を割らないのを知っているから、ワシはそれ以上聞くことをやめた。
「・・・・・・そうか。
では行くぞ。」
そう言って再び歩き出そうとA背を向けた。
名残惜しそうにそれを見つめる切な気な瞳。
気付いたときには血が滲むほど唇を噛み締めていた。
歩いているうちに思い付いたある考え。ワシはそれを実行すべく毎度立ち寄る甘味処へと足を運んだ。
出され団子にそわそわしているAが余計なことを考えているはすぐに分かった。
暫くすると小さな口に団子を頬張ると、キラッと大きな青い目が光った。
どうやら気に入ったようだ。
みたらし団子が特に気に入ったようで、ワシがそれを食べようとしたときに視線を感じた。
ワシはそれをAの口に突っ込み、“いいおなごを見つけた”という適当な台詞を吐き捨て、バレないように鼻の下を伸ばしながら人混みに紛れた。
瞬身を使えば一瞬でついてしまうが、それは目立つので使うことが出来ない。
人に紛れている忍びなんて自分以外にたくさんいるのだ。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月24日 1時