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私に気づかれないような嘘を言って、あたかも偶然それを買ったかのようにして
優しすぎるよ、自来也様…
「これを受け取ってくれたら話があるんじゃ
相談に乗ってはくれんか?それでチャラってのはどうだ?」
自来也様はニカっと歯を見せて笑った。
安心するように笑みを浮かべる自来也様の優しさで涙が落ちそうになったから、それが落ちる前にぐいっと自分の服で強めに拭いた。
『それは、そんなにじゅうようなそうだんなんですか?』
聞き方が生意気だったな、と言った後に思った。
私が言いたいのは、その相談が、その首飾りと同じくらいの価値があるかどうかということ。
どの女の人がいいとか、どのお店のご飯が美味しそうとか、そういう相談だったらそれは受け取れない。
でも結局どう言っても生意気だ。
自来也様に嫌な思いをさせてしまったかもしれない…。
「あぁ、Aにしかできぬ相談だ」
自来也様の瞳は力強いものだったけれど、優しさもある目だった。
でもどんな相談かわからない。
真面目な顔でズレたことを言うのが自来也様だ。
首飾りを受け取ったら、とそう言われたけど、先に相談を聞かなきゃ気がすまない。
私は強気な態度で、自来也様有無を言わせないように強めに言った。
『…さきにそうだんききます』
自来也様は少し顔を下に向け、ふぅと息を吐いた。
それから再び私へと顔を向けた。
そこには真剣な表情で、私を見る自来也様がいた。
「ワシの娘にならんか?」
この瞬間、涙が出た。
いつもは我慢できた。じわりじわりと出てきたそれも、ギリギリのところで抑えた。
でも今はそれができなくなるほど涙が溢れてくる。止めようとしても止まらないんだ。
本当はずっと、怖かった。
自来也様は私の事をよく面倒を見てくれた。でも、いつかは離れなくてはいけない。
自来也様は一緒に居てくれる。
でも結局自分は一人だ。
私を知る者など誰一人いない世界。
頼れる人は誰もいない。
赤の他人の私を、自来也様はいつかは捨てるかもしかれない。
嫌われないようにいつの間にか必死になっていた。
ずっと、強い繋がりを。確かな繋がりがほしかった。
何も言えず泣き続けた。
するとふわりと優しい温もりが私を包んだ。
目の前には自来也様の胸がある。
私、自来也様に抱き締められてるんだ。
その腕のなかはとても居心地が良くて、温かくて。安心した。
私はそれを離さないように自来也様にすがり付いた。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月24日 1時