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今日は国を出るらしい。
朝起きたらそう言われた。
昨日いってくれればよかったのに。
歩くのは大変だけと、まだ知らない新しい所へ行ったり、知らないものを見たりするのはとても楽しいから好きだ。
今日はどんな発見があるんだろう!
身支度をしながらわくわくしていた。
「A、準備できたか?」
『はい!だいじょうぶです!』
自来也様は軽く部屋を見回して、忘れ物がないか確認していた。
私は手ぶらだから確認するものは何もない。
「行くか。」
くるりと反転し、私に背を向けた自来也様の後を追った。
宿の外に出ると、容赦なく日差しが目を刺した。
昨日の夜には納まっていた人の流れは、再び活気が増していた。
自来也様がチラッと私をみた。
これは合図だ。“掴め”という。
私は自来也様の服の端を掴んだ。
が、今回だけは違った。
自来也様は私と向き合いしゃがみこんだ。
いつもは遠くにある顔が自分と同じ目線にあるのは新鮮で、普段こんなに向き合うことはないから少し恥ずかしさを感じだ。
一体なんだろう。
こんなことは初めてで自来也様が何をしようとしているのか全く分からない。
「なぁ、A」
『・・・なんですか?』
「その、昨日はすまんかったな」
きっと私を長く待たせたことだろう。
別に私は付き添い?というか厄介だから、自来也様は別に気にしなくていいことなのに。
「それでな、侘びと言ってはなんだがこれをもらってくれんか?」
そう言って、自来也様は懐へと手を伸ばした。
キラッと光るそれを見た瞬間、胸がドキリと音を立て、息が止まった。
『それは・・・・・』
自来也様の手には、昨日欲しくてたまらなくて必死に忘れようとしていたあの首飾りだった。
「ん?どうかしたか?」
わざととぼけたような顔をする自来也様を見て泣きそうになった。
その時の私の頭は信じられないくらい早く回転した。
私と自来也様は基本離れることはない。私がついて回っているから。
危険だからと言って、私と一緒にいないこともあるけど、昨日、今日ではそれはなかった。
私が一緒にいる間は自来也様は何も買ってない。
だから、これを買ったのは私と離れた時ってことになる。
そう、昨日あのお団子屋さんで素敵な女性がいたからと言って人混みに姿を消したあの瞬間しかなかった。
遅くなった理由って、それを買いに行ってたからってこと・・・・?
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月24日 1時