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十分時間をかけて食べたつもりだったが、自来也様は中々帰ってこない。
---もしかしたら私のこと置いてっちゃったのかな・・・。
いつかテレビでやっていたドラマを思い出した。
題名は忘れちゃったけど・・・。
ある家族が少し遠くまで旅行に来ていて、母親が「戻ってくるからここで待っているのよ。ついてきちゃダメよ」と子供に言い聞かせ、まだ自分の住所も言えない子供を置いて家に帰ってしまう。というシーンがあった。
子供は言いつけを守ったがいつになっても戻ってくることはなく、ある老婆に拾われ、親をさがしにいくというストーリーだった。
なんだ、これ。
まさに同じシチュエーションじゃんかっ!
本当に私のこと・・・
いやいや!自来也様はそんな人じゃないっ!
余計な考えを頭から消すため、ぶんぶんと頭を振った。
「お父さん、遅いわね。」
『・・・・・・?』
長椅子に座る私の横に、綺麗に着物を来た女性が座った。
誰に話しかけてるんだろう。と思った。
少なくとも私じゃない。
でも周りを見回しても誰もいない。
・・・・・・私?
お父さんなんていないのに。
「でも大丈夫よ?あの人は絶対帰ってくるから」
ニコッと笑った女性は、よくみると来店時、自来也様と親しげに言葉を交わしていた店員さんだった。な、なんて美人なんだっ…!
キチッと着物を着こなし、長い後ろ髪をお団子にまとめあげ簪を刺した彼女は私に優しく笑いかけていた。
「はいっ!これでも食べて元気だして!
ねっ?」
キラキラと輝く琥珀色の団子を二つ並べた白いお皿を私の膝に置いた。
ちょっと。状況が読めない。
「あの人にもちゃんとした女の人が出来たのね…」
自来也様が消えていった人混みを見つめ、独り言のように言った。
「ねぇ?あなたのお母さんって、どんなかたなの?」
その人は切なそうに目を細めて私をみた。
“きっとあなたみたいに綺麗な人なのよね”と続けた。
ちょっと待って。この私が“綺麗”だとか突っ込むところはあるけど、この人は勘違いをしている。
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作者名:きゃおる | 作成日時:2022年9月24日 1時