【となりの坂田。】灰色林檎。/sera ページ17
*
「……みつけた」
立ち上がったときにはらりと前髪が退いて、大きなルビィの瞳が顕になる。
瞳に滲む驚きに反して、口元には嬉しそうに弧を描いていた。
ガラスの靴を片足に履いたまま立ち尽くす私に、彼は──いや、坂田さまはゆっくりと絢爛豪華な洋服の裾を揺らしながら近づき、すっと跪いた。
「俺と、婚約してくれませんか?」
いいのだろうか、私なんかが、ただの灰かぶりの町娘なんかが、王子さまと手を重ねダンスを踊るだけでなく、婚約だなんて。
……そんなふうに迷ったのは、ほんの一瞬だった。
今日から私は、灰かぶりじゃない。
姫だ。
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360度どこを見ても全く見覚えのない景色。
外の景色も見えず、今が何時頃なのかすら、夕方か夜かすらも分からない。
お城のだいぶ中の方に来てしまったようだ。
お城に住み始めて一ヶ月以上経つのに、元から方向音痴気味な私はまだ道を覚えられていない。
「また迷ったぁ〜もう、夕食には間に合わないといけないのに…」
はあ、とため息をつき壁にもたれかかったその時。
ガタッ。
とそんな音を立てて壁がズズズ…、と下にスライドして暗闇の中に続く階段ができた。
「…隠し通路…?」
ごくり、と唾を飲み込み中に入る。
…もしかしたら、この道を行けば夕食に間に合うかもしれない。それにすでに迷子なのだから、入っても変わりはない。
夕食に間に合わなくても、きっと坂田さまが見つけてくれるよね。
そんな根拠のない自信の籠もった言葉で暗示をかけ、また一歩足を踏み入れたのだった。
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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