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『鏡よ鏡。この世で一番美しいのはだあれ?』
階段の先に広がっていたのは、最低限の明かりの灯された部屋…というよりは、広間。
そして、殺風景なそこにぽつんと置かれた、大きな鏡。その前に立つ女性。
お母さま、だ。なんでここに…?
鏡の銀色の光が眩しい、異様なこの光景に、私は立ち尽くすことしかできなかった。
やがて、お母さまの問いに答える声がした。
『女王さま、ここではあなたが一番美しい。…けれども、』
その途端、背中をぞわりと冷たい空気が撫でる。
『…白雪姫は、千倍も美しい』
なに、なんなのあの鏡は。
鏡が喋っていること、そして目に見えぬお母さまから漂う熱い炎のような怒りに、今度こそ明らかな恐怖心が湧き上がった。
いつも静かで、お淑やかなお母さまは、声を荒ぶらせてもうよい!と鏡に布を被せてしまった。
すると、部屋から鏡の明かりが失われ、ランタンの小さな明かりのみとなってしまう。
「……白雪姫を…あの子を、殺してしまいさえすれば…わたくしが、わたくしが…」
お母さまの小さな呟きが怖くて、怖くて、弾かれたように階段を駆け上った。
やだ…やだ、なんでわたしが。あんなにお母さまは優しくしてくれたのに、なんで。
「…っ、さかたさまぁ…!」
城の中をあてもなく、何度もドレスに躓きそうになりながらも走り続ける。
やっと見えた外は、とうに夕食の時間なんて過ぎているだろう。まんまるな月が浮かんでいた。
殺される、お母さまに。…いや、女王さまに。
坂田さま、どこですか、助けて、お願い。
坂田さまの顔を思い浮かべると、我慢していた糸がぷつりと簡単に切れてしまって、涙が溢れてきた。
夜風が涙を冷やして、体温が奪われていく。
廊下にへたりこんだ、その時。
「……みつけた」
振り向くと、あの日と同じルビィの瞳と視線がぶつかった。
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関西風しらすぅ@坂田家 - 坂田さんの絵本描いてる設定とかリアリティありすぎて好きです。幼いセンラさん天使すぎな。 (2019年6月16日 11時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
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