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数分して、またひとつの足音が近づいてくる
この部屋の周辺には建物がないのか音には敏感になれる
「 うわ〜痛そ…話せる?ってか起き上がれんのか 」
また持ち上げられた椅子は、転ぶことなく次は正面を向く
ずっと下を向いていたからか、頭が上がらない
「 あーそのままでええよ、で名前は? 」
『 っ…言わなかったら… 』
脳内にあったのは、さっき男が言った "命令" だった
頭を踏まれるのも、痛みを感じるのも、もう嫌だ
「 そうやな〜…まぁ名前ぐらいすぐ割れるしええかなって 」
『 なにも、しないの? 』
「 さっきの男にそう言われたんやろ、ごめんな? 」
乗せられた手は、頭を優しく撫でる
苦痛を感じる中で与えられた暖かさに、浸っていたい
「 じゃーこれには答えてほしいかな、 」
『 は、い 』
「 なんであそこに捕まっとったん? 」
『 それは、冤罪だったんです 』
「 えんざい…ってなぁに? 」
本当にこの人に言って良いの?知らない人なのに
もしかしたらさっきの男の仲間かもしれないのに
そうだ、未だ縛られてるんだ
それを解かないってことはやっぱり仲間で違いない
「 黙られててもなんも分からんのやけど… 」
『 あ、いや、万引きしたので、 』
「 なに盗んだん 」
何故こんなに絡んでくるの…?
沸きまくる恐怖心がわたしを襲う
「 嘘、ついたやろ 」
反論の声がでなかったのは、図星だったから
少しの沈黙が流れた、
「 俺はこんなに信用してたのに…あーあ、しょっく 」
『 ちが、ごめんなさい、嘘、ついて 』
「 …ちゃんと謝れたなぁ?でも、お仕置きはくらわんと 」
掴まれたあたまを、上に引っ張る
絡んだ視線はわたしを逃さない
反対の手で首元を撫でると、一箇所に力を込める
今までできていた呼吸が途端に苦しくなる
精一杯叫んでも自分の首を締めるだけであった
「 かひゅー…かひゅーって、かーわい 」
『 や、めて、 』
「 えーなんてー? 」
『 やめて、く、ださ、い 』
「 しゃーないなぁ…今回だけやで? 」
離された喉元が酸素を求めて激しく咳き込む
目の前の男はくつくつ笑ってまた、頭を優しく撫でる
「 ほんま悪い男に捕まったで、蓮ちゃん 」
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作者名:蓮。 | 作成日時:2021年10月19日 15時