君の名前を呼べない【赤司征十郎】

22 PM 4:36 ページ47

ﾀﾞﾝｯ―――

誰もいない屋上。


乱暴に扉を閉めた瞬間
私を襲ったのは


脱力感


空虚感


そして


深い嫉妬――――――――。


………苦しい。


………苦しいよ。


…ねぇ、赤司くん。


…婚約者って何？


…赤司くん。



…いつから婚約者がいるの――？



…私、知らなかったよ。


…何で教えてくれなかったの？


…ねぇ、赤司くん。


…どうして


…どうしてあの子は赤司くんのこと



…征って呼んでるの？



…赤司くん、言ってたよね。


…あの時、言ってたよね。




《オレはA以外には下の名前で呼ばせないよ。》




…あれは、嘘だったの？


それとも―――




赤司くんが変わってしまってから


その約束も変わってしまったの？




ねぇ、赤司くん。


赤司くん……。


『…………痛い。』


胸が……痛いよ。


喉を締め付けられているみたいに


上手く息ができないよ。


それも、これも全部…


全部、赤司くんのせいだよ。


…ねぇ、赤司くん。


…赤司くん。


『あ…か…s…』


…痛い。


…痛い痛い痛い。


ねぇ、どうして……？


私だって……


『私だって…私だって！！…今すぐにでも呼びたいのに！！君の名前、呼びたいのに！！…何で？……何で呼んじゃいけないの…？ねぇ、なんで！？』



悲鳴に近い私の絶叫は


虚しくも空に溶けただけで。


誰にも届かなかった。



…気味悪い笑みを浮かべるあいつを除いて



誰にも届かなかったんだ。

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