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「…期待した程でもなかったね。聖帝はなんでまた、こんなチームをゼロの触媒にしようとしたのか…」
悲惨。その言葉がこんなにぴったり当てはまる試合はそうあるもんじゃない。FWからGKまで、雷門の選手は全員白竜のみのプレーで、地面にねじ伏せられてしまった。
期待外れ。率直にそう思った。幾ら弱いシードの集まりといえども、あのHRを勝ち抜いてきたのだ。やっと、チームゼロが本気で戦える。白竜がサッカーを楽しむことが出来るかもしれないと、そう思っていたのに。
「戻ろうか、A。後は教官達の仕事だよ」
「そうだね…とっとと部屋帰りたい」
「…やっぱり、革命なんて言ったってこんなもんか…面白くないな。あの程度の実力で飛んだ戯言吐いたもんだよ」
「わぉ、シュウってば毒舌だぁ…ま、その通りだけどさ」
木から降りようと、幹に足をかけた時。その目を離した一瞬のうちに、グラウンドから叫び声が聞こえてきた。同時に、森の木々を揺さぶる何かの音も。
その音が、森を切り裂いていくシュートが放つ轟音だということに気づくのにも、時間はかからなかった。
「…こんなシュートが打てるやつ、白竜達以外には…」
「いないね。断言できる。普通のシードには不可能だよ」
「んじゃ、この島への侵入者か…いったい誰が」
ぶわっと揺れる枝に捕まることもせず、風とゆらゆら揺れながらグラウンドに巻き起こる砂埃を眺める。そこに、地面に倒れ伏せっていたイレブンの姿はない。ダメだ、逃げられた。作戦失敗だ。
「あーあ、雷門いないや」
「…んー、閃いた。雷門の元監督の円堂守。絶対アイツだよ。白恋中との試合以来行方知らずなんでしょ?この島に来てんじゃないの」
「かもねぇ」
ふぅっと息を吐き出すシュウの横で、私は思いついたことを口にする。円堂守…動向は気になっていたけど。少々調べる必要があるようだ。
「うーん…潜入でもしてみる?雷門に。」
僕らエンシャントダークとAは剣城にも、雷門にもシードだってバレてないしさ、と続けてシュウが言った。心なしか、その顔には悪戯っ子のような笑みが張り付いている。
「剣城、は…ま、私のことなんか覚えてないか。よっしゃ決定、牙山んとこ行くか」
「おー」
木から飛び降りた私達は、コーチである火北となにやら話し込んでベンチ前に佇んでいる牙山の方に足を進めた。
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作者名:わらびもち | 作成日時:2020年8月18日 23時