第144Q ページ29
Side ナッシュ
8月。
日本でのあの試合から丸一年が経とうとしていた。
夏休み真っ只中で空港は人混みで溢れかえっている。
そういえば、あいつの帰国の日の空港もこんな風に人が多かったな...
Jabberwockが日本で起こした一連の騒動によるマスコミからの取材やバッシングは概ね落ち着いてきたが、未だオレがナッシュ・ゴールド・Jrだと外で気づかれるとまずい。
だいぶ落ち着いたが、一年前ならオレ達に負かされたチームから喧嘩をふっかけられたり、そういう奴らでないなら盗撮されたりなんて日常茶飯事だった。
だからこうして黒のシャツにジーンズ、サングラスといったなるべく目立たない格好をしている。
そして今日、9月の大学入学に向けてAがLAに帰ってくる。
折角の彼女との再会をどこの誰ともわからないヤツに邪魔されてたまるか。
そしてオレは、Aとは今まで電話やメールでしか会話をしていなかった所為で柄にもなく緊張していた。
空港のベンチに座りながら日本発の便の到着時間を確認し、何度も時計を見る。
本当に、彼女は来てくれるのだろうか...
オレに逢いに来てくれるのだろうか...
お互い同じ大学の合格通知をメールで見せ合った時は嬉しくてたまらなかった。
そのメールは大切に保存してあるが、それでもこれは夢なのではないかと。
Aがオレと同じ大学に進学したいと本気で思っていることが、嬉しすぎて信じられなかった。
時間が近づくにつれ、不安が募る。
彼女からもうすぐ到着するといったようなメールが来ない。
機内で携帯が使えないのはわかっているが、それでも不安だった。
ベンチから立ち上がり、もっとゲートの近い場所まで移動しようとした、その時だった。
大きなスーツケースを引く、オレンジ色の長い髪の女。
その色は、例えるならロウソクの炎。
暗く寂しい冬の夜に灯る、優しく淡く、暖かい炎。
挫折を経験してJabberwockにいた頃のオレの冷たい心の片隅でいつも灯っていたような...そんなロウソクの炎のように美しいオレンジ色だった。
人混みの先、遠くに見えた彼女。
見失わないようにサングラスを外し、オレは弾かれたように駆け出した。
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かんざし(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています。続編楽しみにしています。 (2022年8月30日 0時) (
レス) id: 52ad1983de (このIDを非表示/違反報告)
ダーカー - 本当にありがとうございました✨この作品に出会えて幸せです！！続編楽しみ‼️‼️‼️ (2021年11月6日 0時) (レス) @page32 id: 80264e36de (このIDを非表示/違反報告)
あげは - やば…おんなじ鳳蝶なんだがw (2020年8月21日 9時) (レス) id: 55916dfabc (このIDを非表示/違反報告)
鱗五雨(プロフ) - 思わず時間を忘れて読み込んじゃいました！（笑）続編まってます！！ (2019年9月21日 18時) (レス) id: af73f39adb (このIDを非表示/違反報告)
月影 - 感動するいい作品でした！主人公ちゃんに感情移入してしまい、号泣しました。昔の彼のようにとナッシュを思い闘う主人公を見て私もこんな風になりたいなと思いました！これからも頑張ってください！ (2019年1月20日 3時) (レス) id: 9446a19fb8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Madras | 作成日時：2018年2月3日 16時
