“アゲハ”と呼ばれた少女は。Part5

第135Q ページ20

Side A




右手に走る、ジンジンと熱を伴う痛み。

叩くつもりなんてなかった。

咄嗟に後悔したけれど、それでも...




『ごめん...

でも私...やっぱり信じられない。

私っ、未だにナッシュのことが信じられないのよ...！！

あんなチームのリーダーやってたことも、首締め上げられたことも、ひどいこと言われたことも、その趣味の悪いタトゥーも...！！

だから...その言葉は嘘じゃないって証明してほしい...

お願いだから、目を見てハッキリ言って...！




折角...嬉しいこと言ってくれたんだから...！！』




私はなんてわがままな女なんだろう。

折角のナッシュからの告白。

嬉しくてたまらないはずなのに、だからこそ信じられなくて。

今まで起きたことすべてが衝撃的すぎて、何が現実で、何が夢なのかの区別もつかないほどに...

再び溢れそうになる涙を俯いてこらえていると、私の頬にそっと触れる手が見えた。

そのまま上を向かされ、ナッシュと目が合う。

真っ直ぐに見つめる彼は、もう泣いてはいなかった。




『目を見て言うだけで...それだけでいいのか？』

『......え？』

『オレの想いがそれだけで全て伝わるなら、いくらでもお前の目を見て言ってやる。




A.........好きだ。

愛してる。

ずっと前から。

お前の留学中に伝えられなくてすまなかった。

帰国の日にオレがお前に空港まで会いに行ったのは、お前にこの気持ちを伝えたかったからだ。

あの時に伝えられなかったオレを、どうか許してほしい。

もう一度言う。

オレは、誰よりもAのことを愛している。

これからもずっと』

第136Q→←第134Q

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す