“アゲハ”と呼ばれた少女は。Part5

第133Q ページ18

私は未だ涙を流すナッシュの首に腕を回し、そっと抱きしめた。

もう、彼を怖いとは思わない。

子供をあやすように優しく頭を撫でる。




『...カッコ悪くなんてない。

バスケで挫折したっていうのに、バスケからは逃げなかった。

だからJabberwockでプレイしてたんでしょ...？

あんたはバスケが大好きだから、バスケを辞めることなんてしなかった。

自力で居場所を見つけた。

そこでも必死に頑張って、だからあんたの憧れてたNBAプレイヤーの“Magic”と同じように、“魔術師(マジシャン)”なんて呼ばれるようになったんだもん...

カッコ悪くない、強い人。

ただ一つ欠点を挙げるなら、昔からそうだったけど、周りを頼らなかったこと。

いろんなものを一人で背負い過ぎてる。

もっと楽に生きてよ...

言ったでしょ？』




「I'm always on your side,Nash.
(私はいつでもあんたの味方だからね、ナッシュ)」




『...オレはお前を遠ざけた』

『うん』

『昨日、お前の首を締め上げた』

『うん』

『swear wordsでお前に散々なこと言った』

『うん』

『許せなくねぇのかよ』

『過ぎたことだし。

勿論、あの時はショックだったけど...

でも、ナッシュも辛い思いしてたって知れたから、もういい』

耳元から聞こえるナッシュの声は弱々しく、とてもあのチームで恐ろしく強いプレイをしていた人物とは思えなかった。




ナッシュは私の言葉を受けると、恐る恐る抱きしめ返してきた。

私はそれに応えるように、首に回した腕の力を強める。

すると彼はさらに力強く、すがるように私を抱きしめた。

肩のあたりから聞こえるナッシュのすすり泣く小さな声。

恐ろしく強くて、プライドが高い魔王様。

今だけでいいから、全てをさらけ出して、弱さを見せて泣いていて...









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『.........好きだ』

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