“アゲハ”と呼ばれた少女は。Part5

第127Q ページ12

Side ナッシュ




くそがぁ...！！

なんてありさまだ...！

まさかこんなサル共に追いつめられるなんて、こんな屈辱は生まれて初めてだ...！！

『...だが、勝敗は別だぞ。

残り10秒、カッとなって強引に攻めるなんてすると思うか。

キッチリボール回して、オレ達の勝利で終わり(ジ・エンド)だ！！』

赤い髪の4番とマッチアップする。

こいつの守備範囲を考えて、ここまで下がれば取られることはないだろう。

タイマーは着々と0に近づきつつある。

勝った。




ふと視界の隅に見えた、鮮やかなオレンジ色。

遠くからでもよく見える、綺麗な色だ。

試合中相手のベンチには視線を向けないようにしていたが、最後の最後でその姿を見てしまった。

(A...)

あの頃と同じ、オレンジ色の長い髪。

あの頃と同じ、薄紫色の瞳。

あの頃と違う、あいつの周りの日本人の仲間たち。

あの頃と違う、オレに向ける悲しげな瞳。

その瞳は、昔はガラス玉のような無機質なものだった。

バスケが好きだったにもかかわらず、自分が強すぎるが故に孤立していった諦めの瞳。

それを1年かけて変えていったのはこのオレだ。

それなのに...




その赤い服に袖を通した姿が憎らしい。

お前が応援しているチームの選手全員が憎らしい。

なぜそんな所に座っている？

なぜオレのそばにいない？

なぜそんな顔で...オレを見ている...？




理由なんて、本当はとっくにわかっている。




ああ、そうだ...

何もかも全部...









オレのせいだ...









パシッ...

第128Q→←第126Q

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す