感情保存の法則 page2 (ページ10)

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番外編① ページ10

きらきら。
きらきら。

「で、こっちが…」

あのAが。あのAの目が。

「まだないの？もう終わり？」
「ま、まだあるけど奥にしまってる」

早く出して。その言葉にはいつもの威圧感はなく、代わりに子どものような純粋さがあった。

(きらきらしてる…)

それはそれはもう、引いてしまうほどに。

失礼だと言えば失礼なのだが、あの、無愛想、仏頂面という言葉が誰よりも似合うAが、キラキラという擬態語が聞こえてきそうなほどに目を輝かせるだなんて。気味が悪い。
それなのにどこかしっくりくるような気もして、なんだか変な気分になってくる。まるきり矛盾しているでしょうが。

「不躾なこと聞くけど、お前二重人格とかじゃないよな？」

そう聞くとAは｢何言ってんだこいつ｣とでも言いたげな目を俺に向ける。それで｢ああ、やっぱりこいつAだ｣と、ようやく認識した。逆に言えば、しつこいようだがそれだけ普段のAとかけ離れていたということで。

以前マシンビルダーやホークガトリンガーに興味を持っていたのを思い出して他も見てみるかと聞いてみれば、Aは予想外に食いついてきた。それに工学を勉強していたことがあるらしく、美空達には意味がわからないと言われる話も全部聞いてくれる。

いつも皆にてきとうにあしらわれる俺の発明品を見るAは本当に楽しそうで、やっぱりすごく嬉しかった。

「機械類、好きなのか？」

何気なくそう聞いてみると、Aは｢え｣と小さく声をあげて振り返る。その目には驚きの色が見えた。

「えって何だよえって。そんな目きらっきらさせてるのに好きじゃないとかわけわからないからな？」

驚きたいのはこっちだ。

「どう…なんだろう」

そうやって暗い顔になって、子どもでも簡単に区別できることに真剣に悩み始める。そしてしばらくして結局、｢嫌いとか苦手とかははっきりしてるけど、"好き"ってよくわからない｣、そうさじを投げ椅子に座った。

自分の気持ちなんて、深く考えるものじゃないのに。

わからないことがあるのが気に食わないのか、どこかむくれているAの隣にビルドドライバーを置く。

「わくわくしたり、そうやって興奮したり。少なくともそれは好きってことになるんじゃないか？」

前にもしたように、ラビットとタンクのボトルを渡す。ドライバーから再生されるベストマッチの音声に、Aは｢さあね｣と言いながら微笑んだ。