拝啓××様 4【銀魂】

目まぐるしい5年間 ページ6

この手紙はまるで銀さん自身が銀さんの未来を否定する様に思えて…私は1回読んだだけで、その後は読む事は無かった。元よりあの短い文は覚えてしまった。

5年。
長いような、あっという間だったような。感覚はイマイチ安定しない。けれど、この5年で江戸や周りは目まぐるしく変わってしまった。

さっきも言ったが江戸から人は少なくなった。かつてはあんなにも栄えていたのに、あんなにも活気に満ちていたのに。今は町を歩いていても人とすれ違う事が少なくなってしまった。

人も…変わった。
私達真選組も大きく変わったと思う。故郷に帰った隊士も居るし、地球を出た隊士だって居る。多分全盛期の半分ぐらいに減ったと思う。

私達はもう真選組ではないから隊服は着ていない。それぞれが好きな様に服装を変えていた。私もショートカットだった髪を伸ばし、服もミニ丈の着物へと変えた。

他の人達も随分と面変わりしたと思う。それだけ5年は長かった、多くの人を変えてゆくのに十分過ぎたのだ。


「酒が回ったのかィ？」
「隊長…」


風に当たっていると隊長がやって来て私の隣へと腰を下ろした、「もう今は隊長じゃねーだろィ」と何でもない様に言う。私は「そうですね」とだけ言って笑った。

いくら真選組が無くなっても、私の中では『隊長』なのだ。あの頃から何ら変わりない、ドSで馬鹿で分かり辛い優しさを兼ねる人だ。今でも頭が上がらない。


「ま、無理強いはしねーけど」
「その方が有難いです」


二人夜風に吹かれる。明かりが灯らない家が多くなった、寂しい夜だ。座敷では皆が楽しそうに騒いでいる、その喧騒も遠くに聞こえた。


「何、考えてたんでィ」


不意に隊長がそう呟いた。隊長の長く伸びた髪を束ねた先が風に静かに揺れる、隊長は顔が整っているから、とても絵になる光景である。真っ直ぐに私を見据える瞳は言葉より物語る。きっと分かってて聞いているのであろう。


「銀さん…どこ行っちゃったんですかねぇ」
「…A」
「本当に…5年も、ずっと」


5年間も何処をほっつき歩いているのだろうか、長い迷子である。いい大人なのに、こんなに皆に迷惑を掛けて。本当に…仕方の無い人である。

何処だって良い、誰と一緒でも良い。せめて無事かどうかだけでも知りたい。たった一通の手紙を残して居なくなるなんて狡いですよ。

遺体も何も見つからない銀さんのお墓が作られたのは、失踪して2年目の夏の出来事であった。

夏の日→←前途ある君に

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す