拝啓××様 4【銀魂】

前途ある君に ページ5

変だなぁ、そう思い始めたのは銀さんが姿を消して2週間近く経った頃であった。あの神楽ちゃんが泣きながら「今までこんな事は無かった」と真選組にやって来たのだ。

真選組は全総力を使って銀さんを捜した。銀さんの行きそうな所、銀さんの知り合い、出来るだけ多くを当たりに当たった。

その頃はまだ桂さんも捕まっていなかったから私は真選組に黙って桂さんの協力を仰いでいた。後に捕まってしまった時は本当にショックだった。

坂本さんに頼んで高杉さんとも連絡を取って貰った。高杉さんなら何か知っているかも知れないし、もしかしたら高杉さんの所に居るのかも知れないとも思った。結果は駄目だった。

それでも誰も希望を捨てようとはしなかった。あの銀さんの事だから、その内何事も無かったように帰ってくる。それで皆でフルボッコにして、後で馬鹿笑いしてやれば良い。心の片隅でそう思っていた。

その希望が打ち砕かれたのは銀さんが失踪してから1ヶ月が経った頃の事であった。

とある場所から見つかった一冊の手帳、そして…私に届いた一通の手紙であった。

まず、一冊の手帳。
そこには謎のウィルスの名前が載っていた。初めの頃は意味が分からなかったが、それから程なくしてそのウィルスが江戸に流行したのだ。だから、いよいよもって銀さんの身に危険が迫っていた事が予測させられた。

白詛、ナノマシンウィルス。
それらの言葉はこの5年で江戸に浸透した物である。感染すると髪が真っ白に染まり、ほぼ死は避けられない。現に江戸の人口は壊滅的に減っている。

故に既に地球を出た人も多い、それでもここに残るのは地球を出る程の金銭の無い人や…どうしても地球にやり残した事のある人や。それは様々だが、何にしても一般人でさえいつでも死と隣り合わせだ。

そして、一通の手紙。
これは私の元へとある日急に届けられた物であった。何処からかは分からない、ただ銀さんからの物であるのは確実であった。乱雑な文字で『坂田銀時』と綴られていたから。

今の今まで一度だって銀さんは手紙を返してはくれなかった。それは居なくなる前だって同じ事、何故このタイミングで…と私は手紙を読むのに躊躇ったが、これも手掛かりだと覚悟を決めて手紙を読んだ。

そこにはたった一文しか書いていなかった。




『前途ある君に幸あらん事を』



たったそれだけ。
本当に短くて、そして『前途ある君』という言い回しに私は…銀さんにだって前途があるじゃないか、と不安になった。

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