拝啓××様 4【銀魂】

走り続ける先に ページ19

「楽、…に？」


私は顔を上げてお登勢さんの言葉の真意を探る。『楽に』とは一体どういう意味で言っているのか、お登勢さんは着物の懐に手を入れると一枚の写真を取り出した。


「知り合いんトコの一人息子らしくてね、顔は悪かないし性格も穏やかな奴だ。是非に、なんて話がアンタにあるんだよ」
「…。」


それはつまり『お見合い』という事か。お登勢さんの気遣いは嬉しいし、相手の人もきっと良い人なのだろうが…、差し出された写真を見る事もせず私はお登勢さんに突き返す。


「…そうだと思ったよ」


無言で俯く私にお登勢さんは弱った笑みを浮かべる。「別に無理に、なんて言わないし。申し訳なく思う事も無いさね」とお登勢さんは写真を仕舞った。私は…何も言えなかった。


「アンタが銀時を好いているのは知ってるし、待ちたいと思う気持ちも尊重したい。これはただの老いぼれのお節介だ、気にしない事だね」
「ごめんなさい…」
「だから気にしないって言ってるだろう」


俯いて謝る私にお登勢さんはどこまでも優しかった。だけど…本当のところは早いとこ私に身を固めて欲しいのだと思う。皆は何も言わないけど、きっとそう思っている。




やはり、心のどこかでは銀さんを諦めている。
それは…私も例外じゃないだろう。



＊＊＊


お登勢さんと別れてから私はお墓から回収した手紙を片手に借家に戻ろうと歩いていた。回収した手紙は今日も今日とてどこにも届かなかった。

意味はあるのか分からない、だけど続けていないとダメになりそうなのだ。何かをしていないと立ち止まってしまいそうなのだ。

ずっと前だけを見て一心不乱に走ってきたから、立ち止まってしまったらどうすれば良いのか分からない。走り続けてきたが故に走り方を忘れてしまった、止まったら最後だ。

だから私は目的もなく、ただ走り続ける。その先に何が待ち受けるのかも知らず、走り続ける。それしか…もう、出来ない。


「ん？A殿じゃないか」
「え？」


ぼんやりと歩いていたら不意に背後から声が掛けられた。振り向くと、そこには桂さんとエリザベスさん。二人は私に向かって手を振っていた。


「今日は」


ぺこり、と頭を下げれば「昨日はすまなかったな。ゆっくり礼も出来んかった」と桂さんが笑顔で此方に向かって歩いて来た。


「いえ、私達も局長を取り戻せたので良いんです。桂さんもご無事で何よりでした」

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