馬鹿息子と孝行娘 ページ18
私はお登勢さんの隣に腰を下ろす。彼女に倣って静かにお墓の前で手を合わせた。
「…いつも、ここの手入れしてんのはアンタだったのかい?」
「はい…私に出来る事、あまり無いので。せめてこれぐらいは、と」
「大したモンだよ」
道理でいつ来ても綺麗な訳だ、お登勢さんはそう言って笑った。私も小さく笑ってお墓の前に置いてある手紙を今日持って来た物と交換する、これが最近の私の日課だった。
「万事屋の家賃はあれで足りてますか?」
「あぁ、どこかの馬鹿が管理してた頃より安定して入るモンだから未だに変な感じがするよ。こんなご時世だってのにねぇ」
万事屋の家賃は私が支払っていた。こんなご時世だ、お金なんてとても手には入らないし、そもそも流通機関が壊れている。だから神楽ちゃんに支払わせる事は不可能にも近い。
私が真選組として働いていた頃、その時に貯金していたお金が少なからず残っていたから、それを私はお登勢さんへ万事屋の家賃として支払っていたのだ。その事を神楽ちゃんは知らないだろう。
「本当に…アンタは良く出来た娘だよ」
「…何にも出来ないですから。私は…、こんな小さな事しか出来ません」
「そんな事ないさね、アンタは十分良くやってるよ」
お登勢さんの手のひらが私の頭に乗る。こんな事を言っては失礼だと思ってはいるが…やはりお登勢さんも衰えたなぁ、と思った。とても、遠い目をする様になった。
故郷に残してきた家族は、とうの昔に地球から出て行った。私がお金を送って、そうして貰った。家族は私も一緒に、と言ってくれたが私は地球に残った。まだ、待ちたかったから。
だから、今の私にとってお登勢さんは自分勝手にそう思っているのだが『お母さん』の様に思っている。迷った時、こうやって側に寄り添ってくれる人、一緒に銀さんを待っていてくれる人。
「あんな馬鹿を息子に持った覚えはないけれど、アンタみたいな孝行娘はいくらいても足りないぐらいさ。甘えられる内に甘えな」
「…ありがとう、ござい…ます」
目頭が熱くなるのを感じて、私は震える声でそう言った。本当のところ不安で仕方がない、気力だけで立っていられたのは…もうとっくの昔に終わっている。今は意地だけだ。
お登勢さんは私の頭をゆっくりと撫でると「アンタはもう十分頑張った。ここらで一度、楽になってみるってのはどうだい?」と、そう言った。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時