拝啓××様 4【銀魂】

貴重な場所 ページ13

「…、よし」


連絡事項だけを簡易的に纏めてメモ帳へと書き残す。朝ご飯は温めればすぐに食べれる様にしておいた、これなら神楽ちゃんでも簡単に出来るはずだ。

翌朝、私はまだ眠る神楽ちゃんを起こさぬ様に起き上がると、いつも通り神楽ちゃん用の朝ご飯を作った。いつもはお登勢さんにお願いしているのだが、泊まった時ぐらいは私が作る。

神楽ちゃんも一応は料理も出来るのだが、何だか私が歳上ぶってしまって栄養管理などが心配なのだ。もう19歳といっても私にとっては変わらず神楽ちゃんは可愛い歳下、ついつい世話を焼き過ぎてウザがられていないか心配である。

メモ帳を応接間のテーブルに置いて、今朝書いたばかりの"手紙"を持って私は帰ろうと応接間を出ようとした。そこでふと、ある事が気になった。


(そう言えば…)


チラリ、と壁に掛かる『糖分』の額を見上げる。ずっとここに在るそれは随分と埃が積もっており、神楽ちゃんの衛生管理上宜しくないな〜なんて前々から思っていたのだ。最後に掃除をしたのはいつだったか。


「ここだけ軽く掃除しておこうかな」


そう呟いて私は洗面所へ雑巾を取りに行った。丁度残り一枚になっていた新品の雑巾を手に応接間へと戻る。これで使い切ってしまうから次に来る時は雑巾を買って来よう。

水を含ませて軽く絞る。神楽ちゃんが起きぬ様にあまり音を立てない事を心掛けた。それを持って額に向けて手を伸ばすが…私の身長だと届かなかった。小さく溜息を一つこぼす。


(どこかに台、あったかな)


万事屋のどこに何があるのか、それを全部把握出来ている訳ではない。ここは私の家では無いし、もっと分かりやすく言うと…私の存在でこの万事屋に残る空気感を汚したくはない。

神楽ちゃんはそれに関して何かを言う事は無いから、私が週に一度訪れる事について本当はどう思っているのか私は知らない。本当は神楽ちゃんもあまり来て欲しく無いかも知れない。

それだけここは…銀さんの面影が濃く残る場所だった。

台が見当たらないので私は諦めて届く範囲だけ拭く事にした。あまりバタバタしていると神楽ちゃんが起きてしまう、柱の横で眠りこける神楽ちゃんの寝顔はあどけない物であった。


「…。」


爪先立ちで額の角を拭く。私の予想通り一拭きしただけでも随分と埃が取れる、もし本格的に額を外して掃除をしたら、もっと大量の埃が取れるだろうな。そう思った。

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