拝啓××様 4【銀魂】

昔と今 ページ14

「んー…」


右手を最大限伸ばして小さな唸り声を上げる。銀さんだったら簡単に届くんだろうなぁ、私よりもずっと大きい人だったからね。




「オラ、貸しやがれ小娘」

「あっ…」

「こういうのは俺がやってやらァ」



背後から強引に雑巾を奪い取って、ドヤ顔で。いかにも銀さんが言いそうな台詞、私はくすりと笑いをこぼした。うん、銀さんだよなぁ。

私は半分呆れて、半分悲しくなって…額から手を引いた。もう十分綺麗になっただろう。あとは傾いた額を平行に…、と手に触れた時。僅かな違和感を感じた。


(何だろう…これ)


額と壁の隙間に何かが挟まっていた。紙の様な素材で、これは…何だろう。良く触ると両面で素材が違った、もう片面はツルツルしている。不思議に思いながらも私はそれを引き抜いた。


「これ…」


それは、写真だった。
万事屋の、神楽ちゃんと新八くん…そして銀さんの写真。そして傍らには定春も写っている。皆、笑顔だった。


(こんな大事な物…)


埃が乗っちゃうじゃないですか、と私は苦笑を浮かべた。大事ならもっとちゃんとした所に保管しないと。でも、きっとこれが銀さんの精一杯だったのだろう。あの人はどこか素直じゃない人だから。

私は写真を元の位置に戻して、お腹が空いたらしく足元に寄って来た定春にご飯をあげて。万事屋を後にした。



＊＊＊



「只今帰りました」


借家に着いた私は挨拶文句を言いながら自室へと向かった。今現在、元真選組メンバーは同じ借家で暮らしている。小さな家に定員以上の人数だから大分雑多な状況ではあるが、隊長の相変わらずな計らいで私の部屋を確保してくれたのだ。

と、言っても…同じ部屋に隊長も居るのだが。それだけでも他の人より広く使わせて頂いているのだ、私は皆と一緒で構わないと言ったのに隊長が聞かなかった。今でも私は隊長に甘えきりだ。


「お帰り」


部屋に入ると隊長が寝転がっていた。「チャイナの様子はどうでィ」と興味無さそうな顔で、心配そうな雰囲気を滲ませた声で、そう言った。


「元気ですよ、気になるなら顔でも見に行ってあげれば良いじゃないですか」
「最近のアイツは相手にしてもつまんねェ」
「喧嘩を吹っ掛けたら乗るとは思いますけどねぇ」


私は冗談交じりに言うが、現実はやはり昔と同じ様にはいかないのだろう。神楽ちゃんも昔よりも大人になって、色々と分別が付く年頃だから。

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