第五十一話 途切れる意識 ページ3
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「…違う…よ。私が…自分から来ただけ、で…治くんが謝る必要なんて…ない」
途切れ途切れになってしまうものの、私は必死に笑みを浮かべてそう言う。
本当は頭を撫でて上げたかったけれど、それは出来そうもない。
それと、芥川くんを殺されたりでもしたら嫌だからこれはちゃんと言わなければならない。
「…治く…ん。芥川くんをこれ以上傷つけるのは……駄目だよ」
「……何で」
芥川くんの事を言った瞬間、先程の恐い顔に戻る治くん。
一体あの天使さはどこに行ったのか。寧ろその表情筋が凄い。
思わず苦笑いを溢しながらも、私は宥めるように治くんの額にキスを落とした。
すると、治くんの雰囲気が少しだけ柔らかくなる。思わず内心安堵の息を溢しながらも、嫌な汗が止まらない。
それと同時に、私は役目を果たしたと言わんばかりに治くんの胸に倒れ込む。
正直もう本当に限界だ。
「…っ、A…!?」
霞んでいく意識の中、治くんの珍しくひどく焦った声が脳内に木霊する。
私は僅かに笑みを溢して、遠退いていく意識に従い静かに瞼を閉じた。
「…ごめん…ね、ちょっと……限…界…」
掠れた小さな声だったけれど、きっと治くんには届いただろう。
意識を完全に失う前、確かに感じたのは浮き上がるような浮遊感と大好きな人の温かい温もりだった。
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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時