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第六十四話 人間の心理学 ページ16

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「…Aは、私の自 殺をいつも止める割に自 殺を止めろとは云わないよね。…其れはどうしてだい?」




其れはきっと、治くんがずっと抱いていた疑問なのだろう。



ただ純粋に知りたいという好奇心の瞳に、私は思わずというように笑みを溢す。


治くんの頭を優しく撫でて長めの横髪を耳に掛けて上げると、私はゆっくりと口を開いた。





「…だって、治くんにとって自 殺は大事な事なんでしょ?」



他の人にしてみれば異端者だとか異常者だとか思う事でも、それでも胸を張って自 殺を繰り返す治くんはちゃんと堂々と生きている。


其れでどれだけ残虐な事を犯し罪を重ねて生きていようと、それを身近な人に知られたくないという後ろめたさが無いのなら恥じる必要はないと思う。





それに、本当は知っているんだ。



今の治くんが本気で死のうとはしていない事。アニメで見た時の治くんは確かに本気だったけれど、この世界での治くんは違う。


ずっと一緒に居て傍で見てきたからこそ、私にはちゃんと分かる。




治くんの自 殺は最早癖だ。きっと治くんは私が居る限り本気で死ぬ事はない。


私は其れを分かっていた。と言っても、本人は無自覚だけれど。



でもちゃんと治くんの事を分かっているからこそ、伝えなければならないと思った。






「世の中同じ人なんて誰一人として居ない。その中には世間じゃ異常者と認定されるものを好む人だって居る。けれど私は、そう言ってくる人達はただ怯えてるだけだと思う」



其所に自分の知らない世界が広がっているから。未知と言わざるを得ない理解し難いものだから。


でもそれはただ、畏怖しているんだ。




「人は自分にとって理解し難いものに対して、遠ざけたり嫌悪したりする習性がある」



世の中には発達障害や知的障害、そんなものを持つ人が居る。


そういう人を無意識の内に遠ざけようとするのは、自分とは違うと思い込んでいるからだ。


だから自分が好きなものを共感してくれる人が居れば同士だと思い、好印象を持つ。



教師になる上で心理学を学ばされた私は、そういう人の心理というものをよく分かっていた。




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第六十五話 奇矯な君→←第六十三話 甘美な寂しさ



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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時

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