第六十六話 堪らなく愛しい ページ18
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珍しくも大きく目を見開かせた治くんの瞳は、動揺と歓喜に忙しなく揺れていた。
今にも泣きそうな顔をする治くんは、まるで何かを堪えるように唇を引き結んで静かに私の肩に頭を乗せる。
そのまま後頭部と腰に手を回され、痛いくらいに強く抱き寄せられた。
「…A、好き。大好き。好きなんて言葉じゃ表せないくらい、君の凡てが堪らなく愛しい」
「…っ、…私も治くんの凡てが大好き」
何とも気恥ずかしい台詞を言ってくる治くんに、私は羞恥心で言葉を詰まらせる。
頬が熱くなるものの、その喜びに高揚感が湧いて自然とだらしない顔になりそうだ。
脳内を治くんが可愛すぎるという言葉で埋めつくし始めていた時、突然首筋に生暖かい感触が伝わって大きく体が跳ねた。
「…っ、」
吐息混じりの声が口から空気となって洩れ出るものの、今はそれどころではない。
予期せぬ出来事に頭が真っ白になって硬直していると、首筋に吸い付かれるような感覚と同時に体中に電気が走ったような感覚に陥った。
そこまでされれば、さすがの私も何をされたかくらい容易に分かる。
「お、治くっ!?」
あまりの動揺に上擦った声しか出ない。
ぎゅうっと抱き締めてくる治くんは、ゆっくりと顔を上げると私の額に接吻を落とした。
「…ねえ、A。私、そろそろ我慢の限界なのだけど…」
その瞳には抑えきれないと言わんばかりの確かな熱が宿っていて、熱がぶり返したのか頬もほんのり赤く染まっている。
心臓が大きく跳ねて血が逆流したかのように全身の体温が上がった。
「っ、治く」
「なーんてね」
「……へ?」
「Aが私の事可愛いなんて云ったから、意地悪したくなったのだよ」
確かに寝ている治くんに可愛いとは言った。実際凄く可愛かったし。
とはいえ、これは意地悪の度を越えている。意地悪の度にこんな事されたら私の心臓が幾つあっても足りない。
というか絶対意地悪じゃなくて本気だった。いや、もう目が本気だった。長年の付き合いだから本気かそうじゃないかくらいさすがに分かる。
とはいえ、本当に治くんが可愛過ぎて困る。日に日に可愛さは増していくばかりで、やる事為す事全て可愛い。
その可愛さは本当に反則だと思う。
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葉桜 桜 - 凄く面白いです!1日にリメイク前の物まで読んで、お話が小説の神様みたいです!更新、楽しみに待ってます!! (2023年5月2日 14時) (レス) @page19 id: e6215ef735 (このIDを非表示/違反報告)
わけめ - ついつい一気に読んでしまいました!更新、楽しみに待ってます! (2022年11月19日 23時) (レス) @page19 id: 979aaf8679 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 凄く面白いです! 無理しない程度に頑張ってください! 更新待ってます! (2022年7月14日 15時) (レス) @page19 id: 50f3e04b49 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます!! (2021年5月2日 15時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
はーちゃん - いや、神か?????面白かったです! (2020年11月19日 16時) (レス) id: 3ad67a8a12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月21日 17時