第四十一話 抱く疑問 ページ42
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広く整頓された綺麗な部屋。
もう陽は暮れている夜の時間帯で、先程からソファーに座っている治くんの上に座らされている私は、後ろからずっと抱き締められた状態が続いていた。
首筋に顔を埋められているせいで、癖毛な髪が肌に当たって擽ったい。
小一時間この状態が続いているから正直そろそろ離して貰いたい所なんだけど、どうもそうはいかないらしい。
いつにも増して甘えん坊になっている治くんは、先程からグリグリと頭を押し付けてきたりしている。
最初は頭を優しく撫でて上げていたものの、さすがにそれを一時間も続けられる訳もない。
だから今はされるがままの状態だ。
とはいえ、別に嫌な訳じゃないから私も大人しくしている訳だけれど。
そこでふと、今まで思っていた、というよりずっと抱いていた疑問が浮かぶ。
だから何となくこの機会に聞いてみようと思った。
「……治くん」
「何だい?」
私が呼び掛けると、直ぐに反応して治くんが云う。思わず云い淀みながらも、私は口を開いた。
「…治くんは、私の事を凄く好いてくれるよね」
「そんな言葉では云い表せないくらい大好きだよ」
私の言葉に何ともド直球に恥ずかしい事を云ってきた治くんに、私は嬉しさと何とも云えない感情を覚える。
そして私はずっと思っていた疑問を口に出すべく再度口を開いた。
「どうして治くんは、こんな私をそんなにも好きになってくれたの?」
だって矢っ張り疑問に思うだろう。
私は前世から治くんを知っていた。太宰治という一人の人間を知っていた。
探偵社での日々、黒の時代、織田作との友情、光に来てすっかり優しくなった彼の姿。
そんな一つ一つを知って私は凄く好きになって、此方に来てから元々重かった愛はまた更に何倍も大きくなった。
けれど治くんは違う。
本来なら私達はただの幼なじみという関係でしかない。
そんな私をどうしてこんなにも好いてくれたのか、それは私とっては一番謎だった。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (11月10日 19時) (レス) id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - I am gotさん» コメントありがとうございます!神作だなんて…!!(泣)こんな作者の作品を好いて下さり本当に有難うございます!これからも頑張らせて頂きますね! (2019年7月21日 14時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
I am got(プロフ) - ヤバイ。神作。めっちゃ好きです!!続編楽しみにしてます!! (2019年7月21日 14時) (レス) id: dd6540e082 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬月鏡(プロフ) - 結月さん» コメントありがとうございます!沢山妄想しちゃって下さい!(笑)更新頑張ります! (2019年7月18日 10時) (レス) id: 6aa236e388 (このIDを非表示/違反報告)
結月(プロフ) - 今日も今日とて妄想させて頂いてます!更新待ってます (2019年7月18日 10時) (レス) id: 013547788b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水瀬月鏡 x他1人 | 作成日時:2019年7月14日 16時